２４日に行われた東京五輪アーチェリー混合団体戦準決勝。アン・サン（２０）が撃った矢がすでに１０点の的に刺さっていた矢を射貫いた。標的の真ん中のカメラレンズを貫いた先輩たちの姿を再現した。まさに韓国アーチェリーの超格差の端的なワンシーンだった。他の国が韓国アーチェリーをベンチマークするとして韓国人指導者を連れていったのは十数年前からだ。訓練法と戦略が露出しても韓国アーチェリーは守城を超え格差をさらに広げた。

４０年にわたり世界トップを守る韓国アーチェリーの核心キーワードは「原則」と「実力」だ。新型コロナウイルスで東京五輪が１年延期され、アーチェリー選抜戦は今年再び開かれた。同等に競争し最高を決める原則は崩さなかった。そのため昨年肩を負傷したキム・ジェドク（１７）も参加できた。混合戦出場者も２３日のランキングラウンドでの高得点順に選抜した。年齢・経験に関係なく公正な基準を設けたために最年少のキム・ジェドクとアン・サンは初の五輪出場でも実力を発揮した。最近の若い世代が叫ぶ「公正」と「実力主義」を韓国アーチェリーが見せた。

２０００年代生まれのキム・ジェドクとアン・サンは「Ｚ世代弓師」だ。大きな舞台で萎縮しなかった。キム・ジェドクは大きな声で「大韓民国ファイティング」を連発した。火のような覇気にテレビ解説者も「アーチェリーでこうした選手を見たことがない」と驚いた。混合戦で最初のセットを逃してもひっくり返したアン・サンは氷のように冷たい。心拍数測定の時に最も振れ幅が少なかった。アン・サンは「意志さえあればできないことはない」といつも話している。「一度まともにくらいついてだめならまた挑戦すれば良い」という彼女の度胸が特有の冷静さを作り上げた。

韓国アーチェリーは１９７２年のミュンヘン五輪以来金メダル４２個のうち２５個を獲得した。通算２位で８個の米国とも「超格差」だ。トップを守る秘訣は何か。アーチェリー超格差の原動力はノウハウの蓄積だ。勝つ方法を知る。どのようなトレーニングが必要で、どのようなメンタルが要求されるのか数十年間蓄積してきた。大韓アーチェリー協会とコーチ陣は大会が終わると数百枚の報告書を作成する。システムのおかげで人が変わっても競争力を維持する。途轍もない練習量と科学的練習法も韓国アーチェリーの伝統だ。選手らは選抜戦だけで数千発の矢を撃つ。最も優れた選手同士が競争するため練習の効果は自然に大きくなった。

アーチェリー協会は五輪を控え１億５０００万ウォンを投じて鎮川（チンチョン）選手村に東京そっくりのセットを設置した。東京湾に近い夢の島アーチェリー場と似た全羅南道新安郡（チョンラナムド・シンナングン）の慈恩島（チャウンド）で特訓もした。練習日に雨が降っても「良くない環境に適応する機会」として歓迎する。協会長企業である現代自動車グループと協力して人工知能（ＡＩ）映像分析を活用し、選手個人に合わせた瞑想訓練用アプリも開発した。

このすべての過程を貫く理念が公正だ。２０１６年のリオ五輪当時までアーチェリー国家代表８人には１次選抜戦自動出場権を与えた。いまはそれもなくした。世界１位でもメダリストでも同じスタートラインに立つ。選手は２０００人に満たないが、こうしたシステムのおかげで特定選手に依存しない。代表選手全員がエースだ。アーチェリー協会関係者は「公正に選手を選ぶため選抜戦がとても長くなった。その過程で不必要なエネルギーを使うのではないか心配したが、結局システムを作る過程だった。練習の効果も大きかった」と話した。