【時論】大統領「個人」侮辱は国家冒涜罪にならない」=韓国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.05.12 15:58
朴正熙(パク・ジョンヒ)大統領の維新独裁時代だった1975年、刑法に国家冒涜罪が新設された。大韓民国や憲法に基づいて設置された国家機関を侮辱すれば国家冒涜罪で処罰された。憲法に基づき設置された国家機関には大統領も含まれた。このため国家冒涜罪を国家元首冒涜罪とも呼んだ。激しかった維新の時代に大統領は個人でなく国家だった。大統領侮辱は国家に対する侮辱であったし、国家の安全と利益・威信を害しかねない重大な犯罪だった。
2019年7月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領を誹謗するビラをばらまいた疑いで30代のキム・ジョンシクさんが侮辱罪で告訴された。侮辱罪の保護法益が個人の人格的価値に対する社会的評価であり、ビラ配布で大統領個人の名誉が毀損されたため、罪は成立する可能性があった。しかし公人の大統領に対する国民の政治的言動に刑法の基準を突きつければ思想と意見の自由な表現が萎縮する。送検の事実が明らかになり、大統領側の過剰対応という批判が強まると、結局、文大統領は告訴を取り下げた。しかし必ずいくつか問いただしておくべき点がある。
侮辱罪は親告罪であり、被害者が告訴してこそ捜査が進行する。法理上の告訴権者の文大統領が告訴したのは明白だが、捜査の過程で告訴人が誰かを知らせてほしいとキム氏が警察に何度か要求しても、最後まで返答を聞くことができなかった。情報公開法上、公共機関は国民の情報公開請求を受ければ応じなければならない。非公開対象情報は公開できないこともあるが、被疑者の防御権保護レベルで告訴人の名前と告訴内容程度は公開するのが判例だ。にもかかわらず警察は法的根拠なくキムさんの正当な情報公開請求を拒否した。