国民感情とかけ離れたこのような認識が浮上するたびに国民との距離はますます遠ざかっている。先週、ギャラップの世論調査（４月２７～２９日）で大統領の支持率は２９％だった。心理的最低線という３０％まで割れた。堤防に穴が空き始めたわけだ。穴が大きくなれば大統領の意志通りに国政を引っ張っていくことが難しくなる。政党・青瓦台の支持率逆転現象（民主党３３％）が固着すれば、次期を狙う候補らが慌てるかもしれない。盧武鉉（ノ・ムヒョン）元大統領は任期最後の年の支持率が１０％台に落ちると「政権の皇太子」と呼ばれていた鄭東泳（チョン・ドンヨン）候補から「独善と傲慢に基づいた権力を持つ者が振り回す恐怖政治の変種」という暴言を聞かざるを得なかった。当時、秘書室長を務めていた文大統領は追い出されるように開かれたウリ党から離党した主君の姿をそばで見守らざるを得なかった。もう二度と繰り返されてはならない韓国政治の不幸であり悲劇だ。

タカ派の「親盧突撃隊」がいたが、離れる民心をつかむことができなかったように、「親文」タカ派が大統領を救援することはできないだろう。側近と参謀があげる型にはまった報告書から目を転じて民心と向き合うべき理由だ。ギャラップの調査であらわれた大統領支持率の下落は不動産（２８％）とコロナ（１７％）対処の失策のためだ。不動産政策の場合、否定的な評価が８１％に達したが、特に１８～２９歳では４％だけが「肯定的」と答えたという。大統領のＫＰＩ（核心成果指標）の国民の命と財産を守る項目で落第点を受けたわけだ。

登ることより難しいと言われる下山の道、だが、失策を挽回する道がまったくないわけではない。まず、ワクチン政策の失敗から快く謝罪し、原点に立ち戻って改めて始めることだ。米国と欧州国家ではマスクを脱いでコンサートや旅行が再開されているが、われわれは「ワクチン不足」で接種延期と中止が続いている。距離の確保と５人以上私的な集まりの禁止など国民の一方的な犠牲を強要する防疫政策が１年以上続き、民心は爆発直前だ。それでも「ワクチンの導入と接種計画が円滑に進行」「ワクチン確保の不安定性解消」のような発言が相次ぐ。希望的思考で精神を武装するといって解決する問題でない。むしろ国民の怒りを買うだけだ。

さらに遅くなる前に、この辺で舵を切って水の流れを変えなければならない。まず、ワクチン失敗を認め、国民の前に率直な謝罪からするのが順番だ。Ｋ防疫の成果に酔って一時判断がつかず、ワクチン需給の障害を招いたという点を率直に認めてこそ正しい対策が作られる。それをせずに無誤謬という錯覚と神話に陥り、誤りは覆って成果を膨らませるような「希望拷問」では逃げた民心を取り戻すことが難しい。

数日後には、就任４周年記念日（１０日）だ。「不動産だけは自信がある」「日常回復の希望が見え始めた」という自画自賛でなく、率直な気持ちで国民と向き合う大統領を見たい。４年前就任の辞で文大統領は「後日、故郷へ戻って平凡な市民になって隣人と人情を感じることができる大統領」を希望した。時間はあまり残っていない。

イ・ジョンミン／論説室長

【中央時評】国民と向き合うべき時間＝韓国（１）