【時視各角】文大統領の言葉が虚しく聞こえる理由
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.03.12 16:04
『ローマ人の物語』の著書・塩野七生はカイザルを「私益を公益と巧妙に結びつける能力の所有者」と評価した。たとえばこうだ。カイザルは大隊長や百人隊長から金を借りて兵士にボーナスとして与える。総司令官の善心に感激した兵士が忠誠を誓うのは当然だ。指揮官はどうか。お金が戻ってこない事態にならないようやはり熱心に戦う。最近なら間違いなく涜職行為だが、当時にそのような基準があるだろうか。それなりに一石二鳥の妙手だ。
2000年余り過ぎた今、韓国社会は逆に公益を私益に結びつける能力がすごい。選挙を控えてさまざまな名目で税金をばらまく行為などが代表的な例だ。先日、選挙中立の義務がある大統領が加徳島(カドクド)沖で「胸が踊る」と語ったのもその例になるだろう。カイザルとは違う。公益・私益を結びつける方向も逆であり、技量も一つ下だ。あまりにも内心が見え透いているため「巧妙」とは言いがたい。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が韓国土地住宅公社(LH)投機疑惑に対して連日、悲壮なメッセージを投げかけている。「容認できない不正行為」「抜本的根絶」など語彙も強い。専売特許のような「公正」という言葉も動員した。しかしどこか虚しい。水に油が浮くように上辺だけという感じだ。理由は簡単だ。公益と私益の境界があいまいどころか、完全に混ぜてしまった与党と側近の行為に対しては、一度もまともに問いただしたことがないからだ。指先の膿も一度も出せず、あたかも他人事を話すように国策公企業を叱責しても国民に受け入れられるだろうか。金泳三(キム・ヨンサム)元大統領は問題が発生すればひとまず長官から切った。政治的ショーマンシップという批判もあったが、今の国民の怒りはそのような生贄でも望んでいるのかもしれない。