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【コラム】「弾劾政府よりも劣る文政権」

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.03.03 15:40
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「加徳島(カドクド)に関門空港が建設されれば、空の道、海の道、陸の道が交わり、世界的な物流ハブになるだろう」。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は釜山(プサン)を訪問してこのように述べた。この行事には政府・与党・青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の幹部が総出動した。露骨な選挙介入だ。再執権のためなら手段を選ばないという執拗な意志が見える。

◆国を蝕む後見主義

 
このように特定集団に財を提供する対価として票を受ける形態を「後見主義」(clientelism)という。後見主義は限られた財の均等かつ効率的な配分を阻害する。すぐには「棚ぼた」で良いかもしれない。しかし同じことをすべての地域がするため、その被害は結局、全体が均等に受けることになる。

党がそのようにすれば、大統領が引き止めなければいけない。大統領職は特定政党でなく国民全体のための者だ。大統領なら国家の未来のために党利党略を捨てることができなければならない。しかし彼に欠如しているのがまさにその素養だ。結局、この国の政治文化を60年代の買票政治に戻してしまった。

世論調査で国民の53.6%が加徳島新空港特別法について「誤り」と答えた。「正しい」という回答は33.%。候補地の釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶南(キョンナム)を含むほとんどの地域で否定的な世論が優勢な中、新空港と関係がない湖南(ホナム、全羅道)地域では肯定的な世論が優勢だった。ここにこの事業の政略的な性格が表れる。

新空港は湖南-釜山・蔚山・慶南連帯の物的土台をつくる事業だ。さらに釜山・蔚山・慶南と大邱(テグ)・慶北(キョンブク)の分裂まで誘導できるため神の一手ということだ。国民の血税で票を得る破廉恥な買票行為だが、これを牽制すべき野党も選挙をするにはその流れに便乗するしかない。その結果、無責任な政治が普遍化する。

◆紙くずになった国土部の報告書

国土部は安全性・施工性・運営性・環境性・接近性・航空需要・経済性の7項目すべてで加徳新空港を否定的に評価していた。釜山市は長期沈下が50年間で35センチと主張するが、加徳島より条件が良い関西空港も22年間に数メートル沈下した。維持費は大きくかさんだ。付近はビルの高さの船が通る。海洋水産部は反対している。鎮海(チンヘ)飛行場と空域も重なる。空軍も反対する。湾ではないため風も強い。アンダーシュートでアシアナ機のサンフランシスコ空港事故以上の惨事も考えられる。国内線は金海(キムヘ)に置くというのでトッテ山の危険はそのままだ。

さらに加徳島には地形保全1等級地域が6カ所、緑地自然絶対保存地域3カ所、ツバキ群落地と1キロ内に洛東江(ナクトンガン)下流の渡り鳥到来地がある。環境部が反対する理由だ。原子力発電所の2年延長も我慢できず不法を犯した透徹した環境論者が生態系の宝庫を破壊する。これが政権が誇る「グリーンニューディール」なのか。

建設費も言葉では7兆5億ウォンというが、実際には15兆8000億ウォン(約1兆5000億円)かかる。空港さえ建設すれば需要が生まれるのか。金海空港の物流量は仁川(インチョン)空港の10%、金額では5%にすぎない。20年後に物流量が60万トンに増えると楽観的に見ても、280万トンの仁川の現在の物流量の4分の1にもならない。世界的なハブとは距離がある。

◆立法壟断、180議席の立法独裁

あきれるのは大統領の発言だ。「国土部が責任のある姿勢を持たなければならない」。国土部の報告書には、特別法を受け入れれば公務員の「誠実義務違反」になるという意見が添付されている。ところが大統領が公務員に違法を勧める。月城(ウォルソン)原発事件当時もそのように「責任のある姿勢」を持って公務員が拘束された。

立法も拙速だった。与党議員の口から「町内の河川整備もそのようにはしない」という声が出てくるほどだ。金海新空港は法的にはまだ生きている。破棄されても新空港の立地は新しく選定しなければならず、立法はそれからのことだ。予備妥当性調査を免除したのは、自分たちが見ても事業性がないということだ。

「加徳島新空港を後戻りできないよう法制化する」(李洛淵代表)。事業妥当性調査で非適合判定を受けても、環境影響評価で反環境的事業と評価されても、その法がある限り事業を戻すことはできない。この国では非可逆性の熱力学法則を立法に適用する。

法律が「オールマイティ」という言葉は生まれて初めて聞く。この法は河川・環境・港湾・軍事施設など関連法律31件を一挙に無力化する。一言で法律の法律、すなわち憲法でない憲法ということだ。その法の全能はもちろん180議席の全能から出てくる。ほとんど制憲権力レベルの立法独裁だ。

◆なぜ加徳島か

パリ空港公団エンジニアリングの妥当性研究で金海新空港は818点、密陽(ミリャン)は665点、加徳島は635点を受けた。ところが首相室が話にならない論理でこれを覆した。国家事業を再執権の手段として悪用すると、635点が818点の代案になるという奇怪なことが生じたのだ。

党・政府・青瓦台はあらゆるバラ色幻想を膨らませるが、金海に対する加徳島の比較優位はわずか一つ、夜間運航が可能という点だけだ。しかしロンドンのヒースロー、アムステルダムのスキポール、ドイツのフランクフルトなど欧州の代表的な空港も夜間運航を制限・禁止している。それでもハブ空港としての役割にいかなる支障もない。

滑走路1本が金海にあろうと加徳島にあろうと、差と言えば夜間運航が可能になることだけだが、大変なことが起きた。「産業構造再編の起爆剤」(金慶洙慶尚南道知事)になり、「北極航路の年中利用が現実化し、シベリア横断列車が連結する未来」(任鍾ソク元大統領秘書室長)が開かれるという。北極航路と横断列車が金海では連結できないのか。

加徳島空港に反対するのは「地域冷遇」と扇動する。思考実験をしてみよう。釜山市が主張する建設費7兆5000億ウォンを出すものの、空港の建設・保守・維持および運営に関する一切の権利と責任を釜山市に譲るのだ。この提案を果たして彼らが受け入れるだろうか。おそらく受け入れないだろう。

◆崩壊する国家システム

その事業が「税金を食うカバ」になることは彼らも知っている。加徳島に対する執着はむしろその期待感(?)から出る。しかし4大河川にばら撒いた22兆ウォンは地域民でなく建設会社の懐に入った。標本数が少なく信頼しにくいが、釜山・蔚山・慶南でも54.0%が特別法を「誤り」と答えたというから幸いだ。

この政権は手続きと秩序を破壊し、国家のエントロピーを本当に非可逆的に増加させている。国土部・環境部・海洋水産部など政府部処の公式意見は無視された。関連31件の法律が一挙に無力化された。5市・道の知事の合意も覆された。国家運営のシステム自体が崩れているのだ。

前例ができたため、今後、選挙が行われるたびに特別法が作られるだろう。大邱・慶北新空港特別法も作ってほしいという。我々の忠清道(チュンチョンド)は無視されるのかと怒った瑞山(ソサン)市長が民間空港を建設してほしいという。「特別法は望まない。予備妥当性調査免除対象事業でも選定してほしい」。

◆分別がない政治家たち

2012年の第19代総選挙を控え、チョ・グク元法務長官はこのように述べた。「選挙の時期になると、また土木公約が急増する。新空港10兆ウォンなら高校無償教育10年が可能で、4大河川に投入された22兆なら基礎受給者3年を扶養できる」。その彼が加徳島新空港には「盧武鉉(ノ・ムヒョン)国際空港」という名称まで捧げる。

これも他人がすれば悪い土木、自分がすれば良い土木だ。自分たちが非難した李明博(イ・ミョンバク)政権と何が違うのか。正義党代表時代の沈相ジョン(シム・サンジョン)議員は金海空港の拡張を決定したことを「朴槿恵(パク・クネ)政権でした仕事のうち最も責任ある決定」と評価した。この政府はいつのまにか弾劾政府にも劣る政権になった。

党・政府・青瓦台は極めて無責任であり、便乗する野党は非常に情けない。彼らが買収した票の代金を我々は血税で支払わなければいけない。共和国は「公的業務」(res publica)という意味だ。この国では公的マインドなど全くない人たちが議員、長官、さらには大統領をしている。票を得るために配ったゴム靴が空港に変わったのを「発展」と呼ばなければいけないのか。それでも1960年代の政治家はまだゴム靴を配ることにお金を使った。最近の政治家はそれをするのに国のお金を使う。不条理を見ても防ぐ方法がない。大統領を筆頭に政治家がみんな低俗で無責任だ。どうか分別を持ってほしい。

陳重権(チン・ジュングォン)/元東洋大教授

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