今度は「コロナ変異種リスク」だ。米国と欧州の証券市場は２１日の取引開始から新型コロナウイルス変異種リスクに揺れ動いた。

ダウ平均などニューヨーク３大指数はこの日一斉に急落して取引を始めた。大西洋の向い側の英国で発生したコロナ変異種が引き金だった。

時間が流れ市場は変異種リスクを消化した。下落幅が鈍化した。ダウ平均は３７．４０ドル（０．１２％）値を上げた３万２１６．４５ドルで取引を終えた。大引け直前で上昇に反転した。

これに対しＳ＆Ｐ５００指数は１４．４９ポイント（０．３９％）安の３６９４．９２、ナスダック指数も１３．１２ポイント（０．１０％）下がった１万２７４２．５２で取引を終えた。

米国より先に大引けを迎えた欧州証券市場では、英ＦＴＳＥが１．７３％、仏ＣＡＣが２．４３％、独ＤＡＸが２．８２％下落した。

変異種リスクは英国で始まった。感染速度が「７０％速いものと推定される」という言葉が隣国を緊張させた。欧州主要国が英国発の航空機の着陸を拒否した。

◇感染速度速いという根拠はない

しかし感染速度が既存の新型コロナウイルスより７０％速いことを示す明確な根拠はないという指摘が出た。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、サム・ファゼリ氏は「変異種の出現はとても見慣れたもの。英国の変異種の感染速度がどれだけ速く、毒性がどれだけ強いのかを示すデータはほとんどない」と指摘した。

米食品医薬品局（ＦＤＡ）局長を務めたスコット・ゴットリーブ氏はＣＮＢＣとのインタビューで「新型コロナウイルスが季節性インフルエンザのように速く蛋白質変異が起きるようではない」と話した。

変異種が普及しているワクチンを無力化しかねないとの懸念も過度だとの反論も提起された。トムソンロイターなどによると、新型コロナの最新変異種１７種類のうち８種類がファイザーとモデルナ、アストラゼネカのワクチンによって対応できるものだ。

◇変異種に対するワクチン効果は６０～７０％

ファゼリ氏らはファイザーやモデルナのワクチンが変異種に対して示す効果が６０～７０％水準だと説明した。当初の９０％水準よりは低い。だが６０～７０％も立派な水準だと専門家らは話す。

さらにアストラゼネカとノババックスが開発しているワクチンは、変異種が猛威を振るっている英国人の多くを試験対象にしている。ファゼリ氏は「アストラゼネカとファイザーのワクチンなどが変異種に対しどれだけ効果があるのか出てくる。特にアストラゼネカは変異種に対するワクチンを作っている」と説明した。

一方、米電気自動車メーカーのテスラは、Ｓ＆Ｐ５００指数編入初日に６．５％急落した。編入直前の上昇分をすべて返上して過去最高値から落ち込んだ。変異種リスクに加えアップルが２０２４年に自動運転車を発売するというニュースが伝えられたためだった。アップルの株価は１．２％上がった。