１カ月前に出された国際金融センター指数（ＧＦＣＩ２８）報告書は２つが驚きだった。ＧＦＣＩは英シンクタンクのＺ／Ｙｅｎが毎年３月と９月に出す金融ハブ都市競争力の代表的尺度だ。ひとつは香港の順位だ。３月にニューヨーク、ロンドン、香港の鉄の３強構図は壊れた。香港が６位に落ち「来るべきものが来た」という解釈もないわけではなかった。香港は今回１段階上がりシンガポールと順位が入れ替わった。トップ１０の順序はニューヨーク、ロンドン、上海、東京、香港、シンガポール、北京、サンフランシスコ、深セン、チューリッヒだ。ソウルは２５位だ。

香港とシンガポールの逆転は意外だ。中国の強権支配とこれに対抗した米国の制裁の動きで香港の資本・人材離脱が予想されていたところだ。現在香港の安全弁は本土企業の上場と投資だ。本土企業は香港証券取引所上場企業の半分を占める。時価総額では８０％だ。２０１８～１９年に企業公開（ＩＰＯ）を通じた資金調達額が世界最大だった背景だ。香港の活況はエクソダスを防ぐ防御幕だ。中長期的には香港の金融ハブ座標軸が流動的だろうという見方が少なくない。米中衝突の地政学リスクが厳存する。

中国の躍進も注目の的だ。上海・北京・深センの３都市が初めて１０位圏に同時ランクインした。上海の３位入りも象徴的だ。１９９０年の浦東地区開発と開放決定から３０年でニューヨーク、ロンドンに次ぐ地位に上った。国際金融センター上海は中国の悲願であり国家戦略だ。上海は中国の金融自由化と国際化の試験台だ。香港・ロンドンと株式相互取引制を導入して債券市場の開放を先導した。中国は今年初めに上海金融ハブ建設を加速する新しい政策指針を下した。上海を金融覇権の心臓部とするという考えかもしれない。

深センの上昇も注目される。深センと上海は１９９２年にトウ小平が改革・開放の南巡講話に出たところだ。中国はＧＦＣＩフィンテック競争力分野でも目立った。５都市が１０位圏に布陣した。ソウルは１８位だ。世界の工場・市場から再び金融ハブとして成長する中国の破竹の勢いは恐ろしい。

東京は３月に３位から１段階落ちた。大阪は３９位だ。香港事態以降日本の政官界は国際金融都市構想で騒がしい。首相と自民党、東京都知事が前面に登場した。菅首相は税制措置と行政の英語対応、外国人滞在資格問題にスピーディに対応するという方針を明らかにした。外国人材の所得税と相続税、外国企業の法人税引き下げを考慮するという話だ。

自民党は７月に金融人材流入に向けたプロジェクトチームを作った。座長はＪＰモルガン副社長出身の中西参議院議員だ。菅首相は９月の組閣で中西氏を財務副大臣に抜てきした。本心が透けて見える布石だ。

東京都はすでに官民合同の東京国際金融機構（フィンシティ東京）を稼動中だ。ロンドンと連係して海外の企業と人材の誘致に乗り出している。小池知事は「英国の欧州連合（ＥＵ）離脱や香港情勢を考えると、日本が国際金融都市として世界の選択肢になり得るのは『今がラストチャンス』だ」とした（産経新聞寄稿文）。

ソウルは３月に３３位から８段階上がった。釜山（プサン）は１１段階上がった４０位だ。順位は上がったが日中とは比較にならない。全般的な流れも退歩局面だ。ソウルは２０１２～１５年に２回の６位を含め４年連続１０位圏に入った。２００３年に北東アジア金融ハブロードマップをまとめてから積み上げ力を入れてきた塔に大きなひびが入った状態だ。外資系金融会社は１６２社で２０１６年の１６８社から減少傾向だ。進出より撤退が多い。北東アジアの中心の一歩手前で辺境に追いやられたのは手痛い。

金融ハブの障壁は相変わらずだ。高い法人税と所得税、硬直した労働市場、不透明な金融規制などなど。その上に規制緩和の産物である私募ファンドは詐欺犯罪の温床になった。ここに主要金融公共機関６カ所が地方に移転した。いまは国策銀行も検討対象だ。国家均衡発展は憲法上の義務だが金融は集積効果の産業だ。政治主導の機械的分散ではなく金融競争力を考慮した代案が緊要だ。

ＧＦＣＩの順位で見た国際金融センターは多極化傾向だ。中国が加勢しためだ。インドがついてくる日も遠くない。国際金融ハブをめぐる角逐は避けられない。韓国は海洋と大陸勢力の交差点だ。統一のニューフロンティアも持っている。金融ハブのビジョンがここで立ち止まってはならない。新たな秩序の黎明期であるいまは戦略を原点から見直してみる機会だ。金融中心都市の競争力と魅力に国の将来がかかっている。

オ・ヨンファン／地域専門記者兼大邱支社長