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【コラム】北朝鮮に新型肺炎拡大すれば体制危機も

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.02.28 11:46
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北朝鮮の状況はどうなっているのだろうか。新型コロナウイルスが北朝鮮に広がったかどうかは分からない。感染者がいないと主張する北朝鮮の公式発表をそのまま信じるのは難しい。感染事例があっても把握していないことも考えられる。該当地域の担当者が隠して報告していない可能性もあるからだ。診断試薬が不足し、感染が疑われる事例が発生しても、医師がこれを確認できなかったケースもあるかもしれない。

感染者がいるかどうかはともかく、北朝鮮は先月28日付の労働新聞で「国家存亡の問題」と表現するほど、新型コロナ感染を心配している。北朝鮮に新型コロナが入れば、他国より急速に拡大して高い致死率になる可能性が高い。北朝鮮の住民は栄養失調で免疫力が弱く、北朝鮮には医療品が不足して隔離施設もかなり後れている。平壌(ピョンヤン)のロシア大使館は最近、北朝鮮の外国人隔離措置で職員が温水も出ない寒い部屋に隔離されたと抗議した。外国人もこのような待遇を受けるのなら、北朝鮮住民が隔離されればはるかに劣悪な状況に置かれるのは明らかだ。

 
そして北朝鮮の遅れた医療サービスのためにウイルスは急速に伝播するだろう。一部では北朝鮮がこのようになった原因は国際的な対北朝鮮制裁にあると批判する。しかし対北朝鮮制裁が実行されるはるか以前から北朝鮮の医療体系はすでに崩壊していた。2009年に北朝鮮で筆者が訪れた田舎の薬局には薬剤師が患者に渡す薬が全くなかった。薬剤師ができることは患者に一杯の茶を出して慰めることだけだった。その頃すでに北朝鮮の病院はビールの空き瓶をリサイクルして殺菌容器の代わりに使用していた。

伝染病の発病は人道主義的にも深刻な問題だが、政治的な問題も起こす可能性がある。まず北朝鮮政府が新型コロナ遮断の重要性を強調しただけ、感染者が発生すれば政府のウイルス遮断失敗を証明することになる。また北朝鮮保健体系の深刻な実情を表し、北朝鮮の住民は強い憤りを感じるだろう。

感染拡大は政治活動に大きな制約をもたらすと考えられる。北朝鮮はすでに2月8日の建軍節記念閲兵式を中止し、4月12日に予定されていた平壌(ピョンヤン)マラソン大会もキャンセルした。病気に対する対処自体が政治的な難題を起こしたりもする。北朝鮮はすでに多量の医薬品を要請したが、医薬品をどれほど受けたか、また今後どれほど受ける予定かは正確には分からない。新型コロナ感染者が発生する場合、北朝鮮は海外専門家を入国させるかどうかを決めなければいけない。そしてこのすべての状況は主体思想と衝突する。北朝鮮は1990年代に深刻な大飢饉で外国の食糧支援が必要だった時期にも外国人の入国を避けた。

ウイルス拡大は北朝鮮の経済に大きな打撃を与えるだろう。すでに中国国境を閉鎖したため経済的な問題が発生する兆候が表れている。中国からの輸入に依存していた品目は値上がりし、国境貿易で生計を維持してきた多くの住民が収入を失うことになる。住民が生活必需品を購入する「市場」が閉鎖される状況も出てくるかもしれない。北朝鮮政権に最悪のシナリオは伝染病の拡大が軍隊に影響を及ぼすことだ。北朝鮮の軍人は食料も不足し、一般住民より厳しい環境で多数が共同生活するため、大きな部隊で感染者が発生する場合、拡大を遮断するのがかなり難しい。軍人が病気になったり死亡したりすれば軍事力も弱まるが、何よりも軍人の怒りが強まり、これは北朝鮮政権にとって深刻な脅威となる。

独裁政権で災難への対処を誤れば破局的な結果をもたらす。旧ソ連の住民は政権の嘘と弾圧に数十年間にわたり耐えたが、結局、チェルノブイリ事件で爆発した。チェルノブイリ原発事故の5年後、ソ連は崩壊した。

ジョン・エバラード/元平壌駐在英国大使

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