中華人民共和国樹立以降の中国現代史を「紅・専」転換の歴史とする見方がある。「紅」は思想と理念が勢力を伸ばしていた時期を、「専」は実用主義を掲げた専門家が力を得た時期を指す。前者は大躍進運動と文化大革命が、後者は百花斉放や劉少奇の実用主義改革が代表的だ。紅・専の競争は１９７８年のトウ小平の改革・開放宣言以降、専の最終的勝利で「歴史の終末」を迎えたように見えた。

しかし、最近忘れられていた紅が復活する局面を迎えている。要職に専門性より習近平主席個人の「習近平思想」に対する忠誠の程度に応じて配分される傾向があるということだ。新型コロナウイルス感染症（ＣＯＶＩＤ－１９）事態の初期対応が混乱を極めたのもこのためだという分析が提起されている。

苦々しいのはこれが対岸の火事ではないという事実だ。文在寅（ムン・ジェイン）政府も専門より理念中心の人事を断行したことが後に災いを生んだケースが少なくない。国の財政を扱ったことのない張夏成（チャン・ハソン）元青瓦台（チョンワデ、大統領府）政策室長は恐れを知らずに「所得主導の成長」の実験に乗り出したが、経済に大きな負担をもたらした。原子力が主専攻だった白雲揆（ぺク・ウンギュ）元産業通商資源部長官は脱原発以外の事案に対する見識不足を随時露呈させた。法務部に雑音が止まないのも３人の長官がいずれも検察組織に対する理解度が著しく低い外部出身者ということと無関係ではなさそうだ。特に、このような人事の背景には根本的に既得権勢力でもある専門家集団に対する不信が敷かれているようで懸念が高まる。

政府は、新型コロナウイルス対応の過程でも専門家集団である大韓医師協会の「中国人入国禁止」勧告を６度も拒否した。だからといって、政府内の専門家集団である疾病管理本部に全権を与えることもなかった。そうしている間に、新型コロナウイルス陽性判定患者数は幾何級数的に増えている。さらに悪いことに、医療門外漢ながら医療責任者の地位にある朴凌厚（パク・ヌンフ）保健福祉部長官は失言を乱発したが、国民の怒りと辞任要求に直面した。

政府は専門家の認識を原点から改める必要があるように見える。「公務員は国民に対して責任を負う」と明示した憲法を遵守するためにもだ。

パク・ジンソク／社会エディター