【中央時評】コロナウイルスを克服してくれる成熟した市民意識=韓国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.02.21 10:44
ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー映画祭で脚本賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞を相次いで受賞する場面をテレビで視聴したときに受けた大きな感動は忘れられない。しかし、ポン監督が帰国した空港で「私に拍手を送ってくださったが、逆に今コロナウイルスを見事に克服している国民の皆さんに私が拍手を送りたいと思う」、「私も手を懸命に洗いながらコロナ克服の隊列に仲間入りするようにしたい」と言った時も穏やかながら心温まる感覚が拭えなかった。COVID-19の拡散による不安と懸念が日増しに高まっていたとき、どんな言葉よりも心に響く帰国の挨拶であり、それこそが私たちに必要だった希望と連帯の修辞だった。現在のCOVID-19事態を克服するために韓国国民が見せた、成熟した市民意識に注目を促すメッセージだったのではないかと思う。
コロナウイルスを克服する市民意識は2つの次元で考えてみることができる。第一に、個人レベルの市民意識だ。まさにポン監督が言った、懸命な手洗いが出発だ。この他にも、マスクの着用、咳エチケット、外部活動の自制、感染の疑いがある場合の選別診療機関訪問による積極的な検査の実施、自己隔離時の原則遵守など、個人の衛生、感染予防と拡散防止のための努力がすべて重要だ。自分の保護はもちろん、相手の安全も守り、このような市民の小さな実践が担保されてはじめて国家防疫システムが効果的に機能できるからだ。このようなささやかながらも重要な個人的努力において、我々市民は比較的成熟した市民意識を見せている。専門家も、特に過去のMERS(中東呼吸器症候群)事態と比較して、一層高まった市民の公衆衛生意識を評価している。
もちろん、現在のウイルス感染経路の把握が困難な地域社会感染が始まった時点で、より体系的かつ細かな国防疫体系と、より積極的な政府の政策的介入が必要なのは事実だ。政府の危機対応段階を「警戒」から「深刻」に上げ、汎政府総力対応態勢を整えようという話も出ている。しかし、むしろこのような時こそ、市民意識と力量がより重要だという主張も提起されている。ソウル大学保健大学院の金昌ヨプ(キム・チャンヨプ)教授は「地域社会感染が始まると、どんなに完ぺきなシステムを備えても行政・防疫当局・医療機関や専門家だけで拡散を防ぐには力不足だ。中央集中式の国家監視網を越えて市民自ら判断して自己隔離するなど、地域と住民の草の根の力量が発揮されなければならない」と主張している。とにかく、現状では政府だけでなく専門家、民間の医療機関、自治体、市民の有機的な協力体制を整備し、私たちの社会全般の感染症対応能力を高めなければならないということには異論の余地はないだろう。