ハリー・ハリス駐韓米国大使は２９日、済州（チェジュ）国際コンベンションセンターで開催された２０１９済州フォーラムで「今年２月のハノイ米朝首脳会談で、米国は完全かつ検証可能な非核化（ＦＦＶＤ）の意味を北朝鮮に伝達したが、不幸にも北朝鮮はこれに対する理解が少し足りなかった」と話した。ハリス氏はハノイ会談が「ノーディール」で終わった理由と、その後の交渉が４カ月間にわたって膠着状態である原因をこのように説明した。それでもハリス氏は「ドナルド・トランプ大統領はミサイル発射にもかかわらず、交渉の扉を開けてある」とし「ハノイ以降も金正恩（キム・ジョンウン）と交渉し続けていこうとするトランプ大統領の意志が多くのことを意味している」と話した。

米国が交渉の意志を明確にしている中で、現在の膠着状態を解消する創造的解決法について、中央日報と財団法人韓半島平和作りがこの日済州フォーラムで開いた「韓半島（朝鮮半島）非核平和に向けた創造的ロードマップ」セッションで、専門家から幅広い提言があった。

この日セッションの座長を務めた尹永寛（ユン・ヨングァン）ソウル大学名誉教授は「トランプ大統領がこれまで北朝鮮の未来は明るいと強調してきたが、今からは実体を示すことによって非核化交渉を積極的に推進していかなくてはならない」とし「非核化の進展と関係なく、終戦宣言のような米朝関係の政治的進展を試みる必要がある」と明らかにした。尹氏は米朝間に常設協議体を稼動させて北朝鮮官僚を米国に招待した後、市場経済教育をするのもひとつの方法だと具体的に提案した。

ソウル大学のキム・ビョンヨン教授は、北朝鮮に非核化を決断させるために、金委員長がハノイ会談で要求した制裁解除または緩和カードを適切に活用するよう主張した。キム・ビョンヨン氏は具体的に「米国が求める『寧辺（ヨンビョン）プラスアルファ（α）』の核ミサイル施設廃棄のために開城（ケソン）工業団地再開カードを重要な交渉手段として活用することができる」と明らかにした。開城工業団地再開は金委員長が今年の新年の挨拶で言及するほど制裁緩和効果が大きく、（制限された地域なので）監視がしやすく他の制裁緩和につながる可能性が低いという理由だった。

延世（ヨンセ）大学のパク・ミョンリム教授は、北朝鮮を国際社会体制に引き込むために、米国はもちろん韓国と日本が北朝鮮との外交関係樹立を積極的に考慮する必要があると主張した。パク教授は「北朝鮮が核査察を受け入れて核拡散防止条約（ＮＰＴ）体制に復帰することを前提に、韓日米が同時に平壌（ピョンヤン）に連絡事務所を開設する方案を積極的に検討する必要がある」と提案した。

慶南（キョンナム）大学のキム・グンシク教授は「ハノイ会談で、トランプ大統領は非核化の対象と範囲、時期などを含めたロードマップを作ろうと提案したが、金正恩国務委員長はこれをすぐに実践しろという意味に取り違えたとみられる」と明らかにした。キム・グンシク氏は「金委員長が何を・いつ・どのように廃棄するのかに対する具体的な約束をした後、その後の実行は米国の相応措置に合わせてすればいいという点で、今後十分に妥協が可能だと考える」と話した。ただし、過去２０年以上、非核化交渉が失敗した経験を踏まえ、北朝鮮が具体的なロードマップを約束するように韓米が歩調を合わせていくことが必要だと強調した。

米国ジョージタウン大学のロバート・ガルーチ碩座教授は「スティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮特別代表が北朝鮮に対話を要請した時、北朝鮮がこれに応じるかも疑問」としながら「北朝鮮はトランプ大統領との直接交渉を希望しているが、このような点で現在のようなトップダウン方式の交渉は良い考えだとは言えない」と話した。今後、実質的な交渉進展のためには実務交渉が重要だという意味だった。

これに先立ち「韓半島非核化と平和体制構築」セッションに参加した金ホン均（キム・ホンギュン）元外交部韓半島平和交渉本部長は「ハノイを基点に、金委員長が要求した『‘寧辺核施設廃棄’対‘制裁解除’』は可能なオプションではないことが確認された」とし「米朝が初期信頼構築措置として北側は寧辺以外の隠匿濃縮ウランプログラムの公開、全面的な核物質生産凍結などを許容する代わりに、米国は北朝鮮の外貨・原油輸入の制限を一部緩和する部分的制裁緩和を考慮してみる必要がある」と助言した。