協議で葛藤を解消する信頼が消えたところが「ヘル朝鮮」に(1)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2016.09.06 13:44
米国で大統領選挙戦が広くメディアの注目を引くのは自然なことだ。ノーベル賞受賞経済学者でありニューヨークタイムズのコラムニストであるポール・クルーグマン氏は共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏に対する批判的な立場を何度か明らかにしているが、8月26日付のコラムでもトランプ氏の立場を批判する内容を載せた。今回のコラムは米国の社会秩序に対するトランプ氏の否定的な見解--米国社会は戦争地域よりも暴力が乱舞して犯罪があふれ、まもなく崩壊することも考えられる状態--を批判したのだ。トランプ氏が米国社会を「地獄のどん底」と表現しているということだ。この言葉はトランプ氏自身が使った言葉というより、トランプ氏の恐怖戦略を要約する言葉であろう。
とにかくトランプ氏の「地獄論」に対し、クルーグマン氏は反証を提示する。例えばニューヨーク市で発生する暴力犯罪件数が過去50年間のどの時期よりも減少したという統計を例に挙げる。もちろん犯罪に対する恐怖がなくなったわけではない。クルーグマン氏本人も午前3時にニューヨークの路上を一人で歩くのをためらうという。しかしクルーグマン氏の考えでは、米国が地獄になったというのは事実でなく、政治的な扇動術にすぎない。もちろんクルーグマン氏は今回のコラムでもそうだが、失業や所得格差、人種主義の問題などを論じてきた。問題は具体的で現実的なところにあるということだ。
ここでクルーグマン氏の発言に言及するのは、米国の問題を論じようというのではなく「地獄のどん底」という言葉が韓国社会を話すのに使われる流行語「ヘル朝鮮」を連想させるからだ。もちろん、社会全体を地獄といっても、トランプ氏の言葉と韓国社会の流行語が同じものを意味するわけではない。社会階層の観点で見ると、トランプ氏は概して上から下を見ながら話し、韓国で「ヘル朝鮮」というのは社会の下層にいると考える人たちが恨みの気持ちを表現するものといえるだろう。