サムスン電子がスマートカー市場進出を宣言した９日は偶然にも現代自動車がプレミアムカー「ＥＱ９００」の発売を発表した日だった。サムスンは車両に使われる各種情報技術（ＩＴ）装備を意味する電装事業に焦点を合わせたが、究極的にはスマートカー市場に本格的な挑戦状を差し出すという見通しが出ている。

サムスンが領域を広げたのはＩＴ技術を活用したスマートカー時代が到来したためだ。５～６年前にはスマートカーは衛星利用測位システム（ＧＰＳ）技術を活用した自動車を意味するのにとどまったが、最近では先端インフォテインメント（情報・娯楽）システムが搭載され、高度なセンシング技術を活用して自動運転まで可能な自動車に概念が変わった。

市場調査機関のトレンドフォースはこうしたスマートカーの生産割合が２０２０年に世界の自動車の４分の３を占めると予想した。今後スマートカーに使われる核心ＩＴ部品の需要が爆発的に成長するという話だ。

ソウル大学のソ・スンウ知能型自動車ＩＴ研究センター長は、「すでに自動車に使われる部品のうち電子部品の割合は５０％を超えた。機械中心だった自動車産業がスマートカーを中心に電機電子にシフトしているだけにサムスンが参入するのは当然の手順」と説明した。

スマートカーの核心部品事業でサムスンはすでに世界トップランク企業だ。脳に相当する半導体をはじめ、ディスプレー、バッテリー、カメラなどはすべてサムスンの主特技だ。自動車に応用できる電子技術も多い。例えば燃費向上補助装置に使うインバーターと電動コンプレッサーなどはすでに冷蔵庫、エアコン、洗濯機などに使われている技術だ。各種車両制御・管理システムはスマートフォンに搭載した技術と似ている。すでに主要系列会社は多様な分野の自動車電気装置部品を生産し主要自動車メーカーに供給している。グループ内のどんな組織とも協業が可能なためシナジー効果を最大化できる。

国民大学自動車工学専門大学院のキム・ジョンハ教授は、「以前から各種自動車用先端センサーとスマートカーの核心部品技術を発展させ実力を積んできた。スマートフォンや家電市場が以前と同じではないということも目を向けた理由」と分析した。

「ポスト半導体」を探していた李在鎔（イ・ジェヨン）サムスン電子副会長の隠れた勝負手という解釈も出ている。サムスングループ核心関係者は「李副会長はこれまでＧＭのダン・アカーソン会長、トヨタの豊田章男会長、フォルクスワーゲンのマーチン・ウィンターコーン最高経営責任者（ＣＥＯ）、フォードのアラン・ムラーリー会長らとの接触を増やしてきた。自動車とＩＴの境界は徐々に崩れており、電装事業にさらに関心を見せている」と伝えた。

だが、サムスンはすぐに完成車市場に参入するのではないと明確に線を引いた。

サムスン電子高位関係者は「スマートカーは現在の自動車とはまったく異なる概念で、グーグルやアップルがすでにしているもの。既存の自動車業界と競争するとみてはならない」と説明した。ＬＧ経済研究院のキム・ボムジュン責任研究員は「以前とは違い一部の部品を生産して（完成車産業に）参入するということ。究極的にはスマートカー分野のプラットフォームを強化する方向にウェイトを置くだろう」と予想した。