「囲碁に出会わなかったら今頃私は刑務所にいたかもしれない」。

歌手キム・ジャンフン（４８）はそう断言する。キム・ジャンフンは「すぐにカッとなる性格で忍耐力がない。だが囲碁を学んで我慢する術を習った」とし「それでも囲碁を知ってこの程度だから、もし囲碁を知らなかったら私の人生は大きく変わっていたと思う」と打ち明けた。

キム・ジャンフンは躍動的なロッカーのイメージが強い。そのような彼が落ち着いて碁を打っているところはなかなか想像できない。だが、芸能界ではうわさになるほどの囲碁ファンだ。棋力はおそらく５段でプロ棋士と２～３点のハンディだけで勝負を競う。彼は「人々は私がいつもキックしたり大声を出したりしていると思っているが、囲碁をするというと驚く」とし「囲碁をやっていると待遇が大きく変わるようだ」と笑った。

初めて囲碁を知ったのは６歳の時だ。「子供の頃は体が弱くて外の活動がほとんどできなかった。あるときうちにいた運転手が私に囲碁を教えてくれた。それから囲碁に完全にハマって小学校では囲碁部に入って活動し、独学しながら囲碁の実力を伸ばした」。

囲碁の魅力にどっぷり浸かったキム・ジャンフン少年はプロ棋士を夢見る。小学校４学年の時はキム・スヨン９段が運営する囲碁道場の門を叩く。棋才は充分あると診断されたが、結局からだが弱くて道場生活を断念した。成人になっても囲碁を忘れられなかったキム・ジャンフンは月刊誌「囲碁世界」「月刊囲碁」を愛読しながら棋院に通って切磋琢磨に励んだ。

忙しい芸能生活の中にも囲碁はいつも彼のそばにあった。キム・ジャンフンは「芸能人の中ではタレントのシン・ドンヨプやロックバンドＳｉｎａｗｅ（シナウィ）のシン・デチョルとよく碁を打っている」とし「特に、Ｓｉｎａｗｅと音楽番組に出演すると碁盤を車に乗せてリハーサルの間に対局した」と話した。また、「シン・ドンヨプとは賭け囲碁をたくさんしたが、彼が私におごらないといけないフライドチキンは悠に１００匹を越える」と笑った。

好きなプロ棋士にチョ薫鉉（チョ・フンヒョン）や李世ドル（イ・セドル）９段を挙げた。キム・ジャンフンは「チョ薫鉉国手のスピード溢れる棋風も好きだが、チョ棋士こそ韓国囲碁の起爆剤の役割を果たされた偉大な人」と話した。引き続き「李世ドル９段は次の一手を予測するのが最も難しい棋士。序盤から独創的な手を数多く繰り出していて印象的」と説明した。

このように囲碁マニアのキム・ジャンフンは、最近、囲碁広報大使まで引き受けることになった。永らく夢見てきたことなので、やりたいことが多いという。キム・ジャンフンは「囲碁は旧式というイメージが強いがどのようにすれば今のトレンドに合うように大衆に伝えられるか、そこが悩み」とし「一つの方法として私の主力ファン層である３０～４０代の女性に囲碁が子供の人格教育に効果的だという点を積極的にＰＲしよう思う」と明らかにした。

囲碁が性格に及ぼす影響については専門家も驚くような分析が続いた。「資本主義社会は勝つ方法だけを教え、負ける方法を教えない。だが、囲碁は棋道を重視するため、負けた後も復碁をして挨拶までしなければならない。このように囲碁は数多くの対局を通じて絶えず敗北を認める方法を学ぶことができる」。

キム・ジャンフンは現在の韓国囲碁界に対する指摘も忘れなかった。「３００人余りのプロ棋士のうち、上位ランカーを除き、ちゃんとした生計手段が確保されていない。残りの棋士のために私がまず財団を作って寄付することも考えている。囲碁界内でも寄付文化が形成されるべきだと思う」。