「お母さん、私、個人情報を暴かれたらどうしよう」、「放送されたら全国的な恥さらし。皆が見る番組なのにどうしよう。」

ＳＢＳ（ソウル放送）のお見合い番組である『チャク』の女性出演者、全さん（２９）が自ら命を絶つ前に母親の李さん（５３）との電話で伝えた心情だ。

李さんは韓国中央日報とのインタビューで「初めは番組出演をやめようとしたが、放送作家が強要して行くことになった」と話し、「撮影過程でも無理な要求をたくさんした」と主張した。李さんは「カメラをたくさん突きつけて撮影を止めようと言ってもさらに撮ったと言っていた。プライバシーと関係する場面だったようだ」と話した。

李さんはまた、「なぜ嫌だといっているのに付いて回って撮影をしたのか分からない」と言い、「放送局のカメラが２４時間回っていて、３人いた部屋だったのに何が起こったか分からないなんてありえるのか」と話した。また「父親もショックを受けていて、口が歪みそうだ」と話した。李さんは「娘が『プロデューサーと作家に編集をうまくやってほしい』とお願いする」と言っていたが、それが最後の通話になってしまった」と涙を流した。李さんは警察の捜査が終るまで娘の葬式も先送りにしている状態だ。

全さんは高校の同級生ＡさんとＢさんにも力に余った心情をカカオトーク等で伝えた。全さんは「撮影の何週間か前から数回、不参加の意思を明らかにしたけれど、製作スタッフからすでに済州島（チェジュド）行きの飛行機のチケットの発券を終えた、出演取り消しはできないと言われた」と伝えた。続けて「内容がとても、私がターゲットになっているから放送後も心配。今、夕食を食べているけど、録音したのを流してカメラが回っていて、私は表情がコントロールできなくて、本当にイライラする」と伝えた。

全さんは同級生が「製作スタッフと事前インタビューでどんな質問をされたか」と聞くと「『傷ついた幼いヒツジ』『結婚がＸＸしたい女』『つらそうに見えず、明るく朗らか、積極的な女』、これが私のイメージ」と話した。リアリティー番組だが、実際は出演者のキャラクターなどを操作したことを見せるくだりだ。

全さんは３日午後には頭痛を訴えていた。Ａさんなどにカカオトークで「気をすごく使ったら、頭痛がして吐きそう。製作スタッフの車に乗って病院に行こうとしたが行けず、薬局で薬を買って飲んだ。ああ、早く家に帰りたい」といった。

警察はこれに伴い、録画過程で強圧があったのか集中調査している。済州西帰浦（ソギポ）警察署は全さんの正確な自殺動機を明かすために６日ＳＢＳ側に放送撮影映像資料を要請した。今回、撮影チームが済州島でとった映像は２００時間を越えると分かった。警察はまず撮影会場であり宿舎であるペンションで前日確保した２時間３０分の映像を綿密に分析している。遺族側が主張する「強圧的な撮影」が実際あったかを確認するためだ。ＳＢＳ側は「映像資料を提出するところまで相当な時間が必要だ」と警察に知らせてきた。警察は全さんが家族や知人に送った携帯メッセージやカカオトークの内容も調べている。全さんが亡くなる前にインターネットなどに残した掲示物があるのかも確認中だ。

西帰浦警察署のカン・ギョンナム捜査課長は「番組関係者の陳述などから、まだ強要情況が確認されていない」とし、「携帯電話と撮影映像分析などを精密調査する方針」と話した。

全さんは５日午前２時１５分頃、『チャク』の撮影場所である西帰浦市下貎洞（ハイェドン）のペンションのトイレで首を吊って亡くなっているのが発見された。