匠は種類もさまざまだ。日産のように匠の職制を持つ代表的な日本企業のトヨタの場合、高級ブランド「レクサス」を製造する九州宮田工場に約１００人の匠がいる。自動車の塗装、縫製、デザイン、エンジン組み立てなどの分野ごとに１９人の匠が存在する。

縫製の匠の場合、ダッシュボードなどを覆う革を精巧に縫製し、美しいステッチを施す。縫製の匠は独特の方法で選抜される。折り紙で９０秒以内にネコを折るのが課題だ。それも利き手とは反対の手を使わなければならない。手の器用さを見るためだ。きれいな形のネコを折れば、匠へ進む最初の関門を通過する。

塗装の匠は７００グラムの圧力で、車両内側パネル表面から３０センチの距離からペイントを噴射してこそ、最も美しい塗装に仕上がることなど知識を職員に知らせる。美しい塗装と光沢のために顕微鏡まで動員する。塗装工程で緻密で滑らかな質感を実現させるためには、スプレー粒子の大きさが非常に小さくなければならない。このために顕微鏡を活用して正確な粒子の大きさを制御する方法を考案した。工場側も騒音や塵を最大限なくし、最高の品質にするために、低騒音コンベヤーベルトや水が流れるいわゆる「ナイアガラスクリーン」など設置し、匠を助けている。

この工場には匠の中の匠、「レクサスマイスター」も２人存在する。３０年以上も自動車製造現場に従事しているマイスターは内部実験性能ドライバーとして活動している。長い経歴から車に乗ってみるだけでどこに問題があるかすぐに分かるからだ。

日産の栃木工場にはノイズをチェックする匠もいる。異音がプラスチック部品から出ているのか、サスペンション内部のゴムから発生するのかなどを見つけた後、解決策を提示するのが匠の任務だ。