【コラム】 ひたすら優しい主人公とのロマンス…ファンタジーになった韓国時代劇 (1)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2013.11.12 16:15
MBC(文化放送)の時代劇『奇皇后』が歴史歪曲の問題にもかかわらず、視聴率で善戦している。ハ・ジウォンという頼もしい女優を起用したスピーディーな物語展開のおかげだ。しかし、純情派の女戦士で描かれる奇皇后を見ているとため息が出る。ドラマが始まる前に「史実とは全く異なることをお断りしておきます」という字幕が出るにもかかわらずだ。
高麗の立場からすると好人物ではなかった奇皇后を主人公にしたのは問題ではない。むしろ問題は、韓国時代劇の主人公をいつも正義的で純情派である上に民族主義的な人物に設定し、事実とは全く違ったファンタジー水準に性格を改造することにある。シェイクスピアの『リチャード3世』のように、否定的な面があるにもかかわらず、興味深く暗い魅力の人物を中立的に描写して、権力と人間の属性を冷静に考察するような時代劇を作ることはできないのだろうか。歴史の中の奇皇后は、善悪を離れてとても興味深い人物だ。奇皇后は、厳しい時代に生き残ろうと闘い、勝利した人間だった。非支配国で生まれたためにモノ同様に献上される「貢女」に選ばれて異国である元に連れて行かれた。幸いにもお茶を入れる官女の仕事をしていて皇帝の順帝の目にとまり、寵愛を受けることになった。『元史』に書かれているように「杏花のような顔、桃のような頬、柳のような腰」だったうえ、何より「優れて頭が良かった」からだった。しかし、生存の道は厳しいものだった。嫉妬に燃えた皇后ダナシリ(答納失里)に激しく叱られ焼きごてを押されることまであった。折しもダナシリが親族の謀反事件で没落したことで、奇皇后は1340年にいったん第2王妃の地位に上がった。