憲法上、大韓民国大統領の最も大きい義務は領土を守護し国民の生命を保護することだ。大統領に軍最高統帥権者の地位を付与したのは彼がこの崇高な義務を遂行しなければならないためだ。

そうした点で民主党の文在寅（ムン・ジェイン）候補がきのう平沢（ピョンテク）第２艦隊司令部を訪問し、北朝鮮の攻撃により真っ二つになった哨戒艦の残酷な姿を見たことは意味あることだ。彼は冷たい海に言葉なく水葬された４６人の海軍勇士に献花をした後、「（哨戒艦を）一般公開したのは本当によかった。哨戒艦事件に対して持たれているさまざまな疑惑を解消するのに役に立つ」と話した。

真っ二つになった哨戒艦はあたかも刃物でダイコンのまん中を切ったように、巨大な金属断面が驚くほど鮮明な姿を帯びている。船体外板が深く曲がっており、伸びた電線の終端は熱で溶けたのではなくきれいに切断されている。一般人の誰にでも公開されているこの現場は、哨戒艦が「魚雷によるバブルの衝撃」で割れたことをひと目でわからせる。哨戒艦は内部事故による爆発や暗礁にひっかかって「沈没」したのではなく、北朝鮮の魚雷攻撃によって「爆沈」させられたのだ。

民主党は哨戒艦爆沈から２年半が過ぎても「北朝鮮責任論」を公式に取り上げたことが１度もない。民主党指導部は李明博（イ・ミョンバク）政権の国民とのコミュニケーション不足と政治的利用の可能性ばかり繰り返し 「米軍潜水艦の誤爆の可能性」「座礁と艦艇疲労説」のようなデマの源の役割をしてきた。

残念ながら文候補はこの日、哨戒艦を訪ねながらも水葬された４６人の勇士が聞きたかった爆沈の責任者に対し言及しなかった。文候補は票を意識した不明瞭な立場にとどまってはならない。哨戒艦の責任がどこにあるのかに対し本人が明らかな立場を出さなければならない。

文候補はこの日、「西海（ソヘ、黄海）の北方限界線（ＮＬＬ）は南北間の海上不可侵境界線だ。西海で北朝鮮のどのような挑発も容認しない」と話した。韓国の領海であるＮＬＬを守るという意志を明らかにしたがまだ解明されていない点がある。

２００７年の南北首脳会談の際に大統領秘書室長だった文候補は、「金章洙（キム・ジャンス）元国防部長官がＮＬＬ問題にとても硬直した姿勢を見せたせいで南北間西海平和会談が決裂した」という趣旨で批判したことがある。これに対し金元長官は、「当時青瓦台（チョンワデ、大統領府）外交安保閣僚会議でＮＬＬ問題に対しとても強硬だとし、私に曲げることを要求した」と証言した。

文候補は当時首脳会談準備委員長としてこのような議論の真ん中にいたためＮＬＬ議論に対する真相と立場をより具体的に明らかにしなければならない。金章洙元長官がＮＬＬを譲歩すべきだったということなのか、当時外交安保閣僚会議で曲げることを要求したのは事実なのか。盧武鉉（ノ・ムヒョン）前大統領は「ＮＬＬは法的根拠がない」というなど懐疑的な発言をたくさんした。盧大統領の秘書室長を務めた文候補もそのように考えるのか、ひとつひとつ具体的に答えなければならないだろう。