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【コラム】夢見る孫正義

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2011.06.24 10:13
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1時間50分の熱を帯びたプレゼンテーションが終わった。客席は静かだった。これでいいのかとばかりに誰かが拍手した。何人かが後に従った。雰囲気はさらに少し寒々しかった。隣の席の記者が文句を言った。

「こんな何の面白味もなく中身もないものをちんぷんかんぷんに…」。

 
20日にソウル・新羅ホテルで開かれた孫正義ソフトバンク会長の記者懇談会の1コマだ。事実そうだった。世界的企業家の母国で11年ぶりの公式懇談会だ。記者としては大きなテーマのひとつも期待するところだ。初めからちょっと不安ではあった。テーマが「ソフトバンク30年のビジョン」という。3年先を見通すのも難しいのに30年とは。実際のプレゼンテーションではさらに先まで出た。300年。孫会長は「いま、ここ」より、300年後を話すことに力を入れた。特に力説した単語は「人間」「幸福」「未来」、そして「夢」。こうした抽象的単語に現実性を付与するほどの具体的方策は何ひとつ出てこなかった。どれほどであれば司会を務めた主宰担当者まで「ヤマはない。適当に使ってほしい」と了解を求めるだろうか。

ところでおかしい。すでに何日か過ぎたが頭から孫会長の話が離れない。昨年の春、数十万の日本人を泣かせたというその動画をあらかじめ見たせいのようでもある。彼がソフトバンク入社予定者らにした講演「孫正義ライブ2011」だ。彼はこのように話し始める。

「今日のテーマは会社紹介ではありません。私がどんな考えで事業を始めたか、何を成し遂げようとしたか、どんな志を持っているかを話そうと思います」。率直な吐露が続く。15歳、「生まれた理由は志を成し遂げるため」であることを悟る。17歳、喀血する父を背にして米国留学に向かう。23歳、「情報革命で人間を幸せにする」という志を立てる。24歳、創業初日にみかん箱に上がってわずか2人の社員に「40年の夢」を語る。社員2人ともおじけづいて辞表を出してしまう。2年後「5年の期限付き」の宣告を受けるが死ぬ気で働く。44歳、自殺行為という非難の中で日本初のブロードバンドインターネットサービスを始める。49歳、経営悪化のボーダフォンジャパンを買収してiPhoneブームを起こす。

こうして見ると、今日の彼を作ったのは9割が「夢」だった。計算が合わない、残るものもない、狂ったと後ろ指を差されるのにぴったりな巨大な夢。だが、動画の中の彼は一喝する。「名前も必要ない、お金も必要ない、地位も名誉もすべて必要ない。そんなまぬけな男でなければ大きなことを成し遂げることはできません。そのような人は誰もぶち壊すことができません」。もしかしたら久しぶりに訪れた母国で彼が本当にしたかった話もこれかもしれない。

動画の最後に彼は話す。「みんな一生懸命に歩きます。一生懸命に生きます。しかし登りたい山を決めていない人、心から志を立てることができない人が99%です。人生は1回きりです。大切にしなければならないです。志を立てて下さい。志を高く!」。

54歳でも夢に向かって疾走する男なんて、美しいではないか。

イ・ナリ経済部門次長

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