【噴水台】死者の名誉
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2010.08.23 16:53
無名だった金辰明(キム・ジンミョン)氏を一躍ベストセラー作家にした小説『ムクゲ花が咲きました』は、1993年に初めて出版されると、すぐに訴訟に巻き込まれた。 77年6月に米国で交通事故で他界した世界的な物理学者、李輝昭(イ・フィソ)博士に対する「死者名誉棄損」問題だった。 李博士をモデルにした小説は、韓国が生んだ天才核物理学者、‘イ・ヨンフ博士’が祖国に帰り、70年代、核開発の途中に疑問の死を迎える陰謀の過程を描いている。 しかし李博士の遺族は「博士の人生を実際とは著しく異なる形で表現し、人格権を侵害した」とし、出版および販売禁止仮処分申請を出した。 「がりがりとやつれた、メガネをかけた雑魚みたいな奴」という李博士に対する侮蔑的な人物描写、「サムウォン閣のシン・ユンミ」という女性との不適切な関係などの部分を取り上げた。 しかし当時裁判所は「李輝昭博士の名誉を傷つける意思はなかった」と判断し、ベストセラーの道を開いた。
死者名誉棄損罪は死者にも生者と同じく人格権があるという法哲学に基づく。 生者が死者に対して「公然と虚偽の事実を摘示した場合」(刑法308条)成立する。 法曹界では「生前の人間は死後にも社会的評価が歪曲されたり名誉が傷つけられたりしないと信じ、こうした信頼は人間の尊厳と価値を永続的に保障するために保護されるべき」と解釈する。 「柳寛順(ユ・クァンスン)は女チンピラ」という表現をした作家に死者名誉棄損罪を適用して有罪を宣告したのが、こうした事例の一つだ。 死んだ諸葛孔明が生きた司馬仲達に勝ったのと似ている。