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【コラム】鳩山由紀夫の友愛論

2009.08.27 17:14
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次期日本首相が有力視される鳩山由紀夫民主党代表(62)の座右の銘は「友愛」だ。 鳩山氏が友人や同僚、兄弟間の愛を意味する「友愛」を座右の銘にするのには理由がある。 日本の時事月刊誌「Voice」最新号(9月号)に掲載された鳩山氏の特別寄稿(「私の政治哲学」)を読むと分かる。

よく知られているように鳩山氏は政治名門家出身だ。 祖父は戦後3度にわたり首相を務め、父親は外相を歴任した。 祖父だった鳩山一郎氏はソ連共産主義とドイツの国家社会主義がヨーロッパで猛威を振るった1936年に衆院議員に当選した。 ヨーロッパの情勢変化に関心を持った鳩山一郎氏はオーストリア・ハンガリー帝国の貴族と日本人女性の間に生まれ、「汎ヨーロッパ運動」の創始者になったリヒャルト・クーデンホフ・カレルギーが1935年に書いた『全体主義国家対人間』という本に深い感動を受けた。 このため自ら翻訳して出版した。

 
クーデンホフ・カレルギーにとって自由は最上の価値だった。 また自由を保障する道具として資本主義を擁護した。 しかし彼は資本主義が深刻な社会的不平等を引き起こし、これに対する反発で平等を追求する共産主義が胎動し、さらに資本主義と共産主義に対抗する国家社会主義が誕生した時代的状況を深く憂いた。 「ひたすら平等を追う全体主義も、放縦に堕した資本主義も、結果として人間の尊厳を冒し、本来目的であるはずの人間を手段と化してしまう」というのが彼の判断だった。

自由と平等は重要だが、それが原理主義に陥るとき、それがもたらす惨禍は計り知れないため、自由と平等が人間の尊厳を冒すことがないよう均衡を図る理念が必要であり、それをフランス革命の3大理念「自由・平等・博愛」のうち最後の理念である「博愛(fraternity)」に求めなければならないと、クーデンホフ・カレルギーは考えた。 鳩山一郎氏はこの本を日本語に翻訳しながら「博愛」の代わりに「友愛」という表現を使い、その後、「友愛」は彼の政治思想の中心価値になった。

戦後の日本に押し寄せたマルクス主義勢力の攻勢に対抗し、健全な議会民主主義を確立するためには、左右の両極端を排撃し、友愛の価値に基づいた政治をすべきだというのが、鳩山一郎氏の所信だった。 彼の孫で、米スタンフォード大工学博士出身教授から政治家になった鳩山由紀夫氏は友愛の現代的意味を「自立と共生の原理」と再正義し、友愛の価値は21世紀にも依然として有効だと強調している。

鳩山氏は脱冷戦以後の日本社会は米国発グローバリズムという市場原理主義にずっと弄ばれてきたと診断している。 資本主義を原理的に追求する時、人間は目的でなく手段に転落するという事実を今回の金融危機が改めて赤裸々に見せているということだ。 したがって現時点で友愛は、市場至上主義から抜け出し、自立と共生の経済体制に転換することだと主張する。

私が注目するのは鳩山氏の友愛論が日本列島レベルに留まらないという点だ。 鳩山氏は国家間の関係でも友愛の精神を強調している。 違いを認め、尊重しながらお互い助け合い、仲良く付き合う共同体的な関係を目指さなければならない、ということだ。 鳩山氏が東アジア共同体の実現を公約で主張している理由だ。

鳩山氏はイラク戦争の失敗と金融危機で米国主導の一極支配体制に寿命がきていると主張する。 にもかかわらず今後20-30年間は米国は相変わらず世界最強国家として残るため、覇権的地位を維持しようと努める米国と新しい覇権国になろうとする中国の間で政治・経済的自立を維持しながら国益を守っていくことは、日本だけでなくアジア中小国の共通した悩みだと指摘している。

軍事力増強や領土問題、そして過去の問題は、韓日や日中の両国レベルで解決できないため、むしろ地域統合を通じて問題を解決するという点も、東アジア統合が避けられない理由だと力説する。 10年以上先を見据えてアジア共同通貨を準備し、最終的には政治的統合まで念頭に置かなければならないということだ。

自立と共存の原理に基づいた友愛の精神の上に平和で繁栄した東アジア共同体を建設しなければならないという鳩山氏の主張は理想論に近いが魅力的だ。 85年前、クーデンホフ・カレルギーがヨーロッパ統合を唱えた時も、同時代の人はあざ笑った。 しかしすべての偉大な歴史は夢から始まる。 鳩山氏が自分のホームページ(www.hatoyama.gr.jp)に特別寄稿の韓国語訳まで載せているのをみると、軽い気持ちで述べているのではなさそうだ。 日本現代史の分水界となる8月30日の総選挙が3日後に迫った。 鳩山氏の夢は東アジアに変化の風を起こすだろうか。


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