大統領が“元大統領”に転職することは決してたやすいことではない。第2次世界大戦の英雄と同時に米国の偉大な大統領の1人に数えられるドワイト・アイゼンハウアーさえ任期末、極甚なうつ病に苦しんだ。後任であるジョン・F・ケネディの就任式のために作られる観覧席を見て「あたかも私を処刑しようとする絞首台みたいだった」と告白した。官職を去るのは失恋によく似ているという話もある(ディーン・アッチソン元前国務長官)。不可能なことはない権力を振りかざした大統領の席を空けることになると、愛より大事な命を奪われる気がするものだ。