民族問題研究所と親日人名辞典編さん委員会という組織が「親日人名辞典に収録される予定者」とし、1回目の名簿3090人を発表した。過去史問題で国が揺るがされている時点に、親日派というレッテルをつけて、新たに数千人の名簿を発表し、議論が広がっている。その名簿に含まれた大半の人々はすでに死去し、自ら釈明さえする機会を失っている。
そのうえ、この組織が公正だと認めうる根拠もない。だから、正否をめぐる攻防だけが広がるに決まっている。今年2月、国会が親日真相究明法を可決させたから、その結果を待つのが妥当だった。かつての歴史を正しく評価しようとのことに異義を申す人はいないだろう。だが、その歴史というものは、見方次第で評価が異ならざるを得ない。その時代に不可抗力的かつ不可避だったことにまで現在の定規を適用する場合、当事者は悔しい思いをするだろう。
真相を究明するというのは、それだけむずかしい作業だ。もちろん、日本の爵位を受けたり、売国行為をしたという明白な親日行為があるはずで、当時やむを得ない、またはそれが現実だと思って対応した場合もあるはずだ。前者の場合については、あれこれ言うまでもない。しかし、後者については「歴史の審判」という基準よりは「歴史の理解」との観点から判断するのが妥当だ。