家の大きさほどの波の圧巻は、19世紀初めの日本人画家、葛飾北斉の「波(神奈川沖浪裏)」であるはずだ。北斎は、西欧印象派に直接的な影響を与えた江戸時代を代表する画家。ヨーロッパ画壇に衝撃を与えた彼の代表作で、それこそ大きな波がむっくりと立ち、真っ白な泡沫を巻き上げながら、小さな渡し船をのみ込むように襲ってくる。華麗な構図と強烈な色相、細かい描写が「大自然の壮厳」として重くのしかかる。
津波の権威者であるジョージ・P・C博士(ハワイ大地球物理学研究所)が運営するインターネットホームページを開くと、まさに北斎の「波」を見ることができる。大きな波、すなわち北斎が大自然に対する敬畏感を表現した波が津波のイメージだ。