ノーベル文学賞のイシグロ氏、母は長崎原爆の爆風でけが

ノーベル文学賞のイシグロ氏、母は長崎原爆の爆風でけが

2017年10月09日09時53分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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小説『日の名残り』の表紙
  ノーベル文学賞を主管するスウェーデン・アカデミーは今年も意外な選択をした。受賞者に選ばれた日系英国人作家カズオ・イシグロ氏(63)は韓国国内の読者に馴染みのない作家ではない。イシグロ氏の多くの作品が翻訳されているうえ、小説を原作にした映画『日の名残り』と『わたしを離さないで』が国内で上映され、注目を集めた。

  しかし読者の相対的な無関心の中、作家として存在感は薄い方だった。海外でも事情は同じで、英ブックメーカー「ラドブロークス」の受賞者ベッティングでイシグロ氏は順位にも入っていなかった。小説『日の名残り』で英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞するなど優秀な作家という点に異論はないが、誰もノーベル賞と関連づけなかった。イシグロ氏の作品を翻訳した韓国の翻訳者さえも意外という反応を見せているほどだ。

  しかし英米では作家としてイシグロ氏の位置づけは確固たるものだった。生まれ故郷の長崎を背景にした最初の長編小説『遠い山なみの光』から関心を集め、2作目の長編『浮世の画家』でウィットブレッド賞などを受賞した。『日の名残り』はニューヨークタイムズから「マジックに近い手並み」という賛辞を受けて英語版が100万部以上売れ、世界20カ国ほどで出版された。同じく代表作の『わたしを離さないで』はタイム誌の100大英語小説に選ばれ、37カ国で翻訳出版された。こうした点が認められ、1995年に大英帝国勲章を、98年にはフランス文芸勲章を受けた。しかし韓国ではそれほど広く知られていなかったのだ。

  2015年の『忘れられた巨人』までイシグロ氏は長編小説を8作品出している。韓国国内でも出版された小説集『夜想曲集』など短編小説はもちろん、脚本やドラマ、作詞も手掛けている。小説のスペクトラムも多彩だ。第1・2次世界大戦を背景にした歴史小説(『日の名残り』)からSF(『わたしを離さないで』)、推理小説(『わたしたちが孤児だったころ』)などだ。しかしジャンル的な特性は弱い方という評価だ。幅広いジャンルの枠の中に人間と世界に対する普遍的な関心を込めている。

  このような特徴はやはり、日本で生まれて幼児期に英国に渡って形成されたアイデンティティーに対する関心によるものとみられる。典型的な日本人女性のイシグロ氏の母は長崎に原爆が投下された当時、現場にいた。10代後半の年齢で、爆風の影響でけがをしたという。このような家系史が込められた作品が最初の長編小説『遠い山なみの光』だ。長崎で生まれて英国で暮らす女主人公の悦子は成長した娘が自殺をする。しかし小説は悦子のことを直接的に描いていない。戦争前に長崎で築いた友人との友情の話を通じて悦子の苦痛を伝えている。こうした形式についてイシグロ氏はあるインタビューで「あまりにも苦痛だったりぎこちなくて自分の人生について話せない誰かが、他人の状況を借りて自分の話を伝えるのが小説を展開する興味深い方法だと考えた」と語っている。原爆後の日本を描くものの、原爆の惨状を生々しく描写する日本の「原爆文学」とは違い、淡々とした叙述で人間内面の傷を表す方式を選択したということだ。

  『充たされざる者』も作家イシグロ氏の個性を感じることができる作品だ。小説はジェームズ・ジョイス式の意識の流れのように見える内容が500ページ以上続き、作品をめぐる賛否両論を呼んだ。「不良な小説」という批判反対側に「確実に傑作」という称賛もあったという。この小説を翻訳した翻訳家キム・ソクヒ氏は「とても個性的な小説。小説の表現様式をほぼ極限にまで高めた作品だと考える」とし「昨年ボブ・ディランをノーベル賞受賞者に選定して文学事態を揺さぶったスウェーデン・アカデミーが今年は最も文学的な選択をしたようだ」と評価した。『充たされざる者』の場合、内容が難解で読みにくいが、イシグロ氏は最も文学の本領に忠実な作家といえるということだ。
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