極微の世界に向かう人間の知的好奇心は終わりがない。 道具の発達が探求欲を満たしてくれる。 ウイルスやプリオンは電子顕微鏡で、極少量の化学物質はGC-MSやHPLC-MSなどの分析装備で調べる。 現在の40代以上は「ミクロ(micro・100万分の1)探険隊」という映画を見て好奇心を抱いた。 1990年代にはナノ(nano・10億分の1)という用語が流行した。 2000年代にはピコ(pico・1兆分の1)も珍しいものでなくなった。
これによって苦しんでいるのが食品業界だ。 過去には見えなかったり測定が不可能だったりして、知ることも探すこともできなかったvCJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)やノロウイルス、ダイオキシンなどまで注意を傾けなければならなくなった。 「食品から発がん物質は一切検出されていない」という「デラニー条項」(Delaney clause)を米食品医薬品局(FDA)が密かに廃止したのも同じ脈絡からだ。