しかし、青瓦台と政府の説明はむしろ逆風を起こすものと見られる。金英哲氏の訪韓が発表された２２日、青瓦台の国民請願掲示板には「不倶戴天の敵である金英哲氏の訪韓に絶対反対します」など、訪韓拒否の文章が相次ぎ掲載された。北朝鮮の思惑が南南葛藤をあおることにあるのではないかという指摘も出ている。

自由民主研究院のユ・ドンヨル院長は「偵察総局は対南情報収集と工作を総括する所」とし「偵察総局の首長を務めた人物が韓国に来れば責任を問うべきであり、お客さんとして接待するのは正しくない」と批判した。自由韓国党のチン・ヒギョン報道官は「少しも大韓民国の土地を踏ませてはなならない」と主張した。

金英哲氏の五輪閉会式出席は、マイク・ペンス米副大統領が開会式に出席するために訪韓して韓国哨戒艦「天安」事件の現場を訪ねたことを連想させる。南北当局者会談に出た元当局者は「９日、ペンス副大統領が韓国哨戒艦『天安』現場を訪ねて強硬なメッセージを出し、引き続き１０日に予定された米朝接触を北朝鮮が取りやめた」とし「金英哲氏を送ったのは米国に向かった一種のごり押しかもしれない」と分析した。このため、金英哲カードは韓米関係を離そうとする試みも含まれている可能性があると保守陣営は懸念している。閉会式出席のために２３日に入国するドナルド・トランプ大統領の娘・イバンカ氏は北朝鮮代表団と会う計画がないが、文在寅（ムン・ジェイン）大統領は金英哲氏らと面会する予定だと知られているためだ。

金英哲氏の訪韓は国際社会の対北朝鮮制裁を弱化させる策略が含まれているという指摘もある。北朝鮮内対南会談の主務部署が統一戦線部だ。過去の「統（韓国統一部）－統（北朝鮮統一戦線部）ライン」のように、南北関係が進展するほど統一戦線部は統一部が公式に相手にしなければならない組織になる。ところで、金英哲氏は韓米などの制裁対象であると同時に北朝鮮では統一戦線部長だ。したがって、制裁対象が交渉パートナーになる可能性がある。匿名を要求した国策研究機関専門家は「金英哲カードは韓国チャーター機の北朝鮮運航やチェ・フィ党副委員長の訪韓など五輪を機に了解された一時的な対北朝鮮制裁の猶予を続けていこうとする意図もあるようだ」と話した。


延坪島砲撃事件の背後も金英哲氏…「訪韓反対」の国民請願（１）