遅かれ早かれそうなるのなら他に道はない。僥倖はない。朴槿恵（パク・クネ）大統領が崩壊させた韓国が空しく堕ちる。途中途中で引き返せる機会がないわけではなかったが、すべて逃してしまった。このような局面に処するや、憲法を持つ国なら回避したいと思う事柄が続出している。まず、早期大統領選挙の可能性だ。今、韓国政治は断崖のすぐそこにまで来ている滝の水のようだ。射られた矢のような速さで大統領選挙に向かって吸い込まれていっている。文在寅（ムン・ジェイン）・安哲秀（アン・チョルス）キャンプ内部では来年３～４月の大統領選挙を見据えて準備を進めている。一日でもはやく選挙を前倒しして突発変数を少なくしようとのねらいだ。

両キャンプにとって最も気になる対抗馬は潘基文（パン・ギムン）国連事務総長。潘氏は来年１月末にならないと大統領選挙の舞台には上がれない。したがって、３～４月の大統領選挙日程は潘氏の出馬意欲を削ぐ。潘氏の選挙力に打撃を加えるだろう。早期大統領選挙は立候補者に国をどのように引っ張っていくという政策的な研究や体系的準備、大衆的露出を許さない。有権者からは大統領適任者であるかを検討し観察するための必要な時間と多くの選択権を奪う。早期大統領選挙では素晴らしい国家指導者が出てきにくい。このように選ばれた大統領は、就任早々、反対勢力から絶え間なく正当性問題に対して挑戦を受ける。国に安定はない。

２つ目に避けたいことは、黄教安（ファン・ギョアン）大統領権限代行の登場だ。野党は何に憑かれたように弾劾イシューに集中している。それ以前の段階で踏むべき国会推薦首相選びは消えている。共に民主党と国民の党が自分に有利な人を選出しようと神経戦を繰り広げ、結局水泡に帰してしまった。大統領選挙への欲は強いが、交渉能力が足りないために生じたことだ。このために１２月初めの国会で弾劾案が通過された瞬間、朴大統領のすべての権限は黄教安（ファン・ギョアン）首相の手に移ることになる。

来年１月ごろに憲法裁判所が弾劾案を認容すれば、黄大統領権限代行はそれから６０日以内に大統領選挙管理者として選挙内閣を指揮することになる〔朴漢徹（パク・ハンチョル）憲法裁判所長は国会で弾劾案が通過すれば自分の任期内である来年１月中に処理する意欲があるという）。民主党や国民の党は、その時、果たして黄教安の国家意志決定権と選挙管理権を横槍入れずに認めるだろうか。黄教安は政治的基盤がないばかりか骨の髄まで朴槿恵側の人間だ。生涯、検察・官僚の道だけを歩んできた。そのような彼が国内外の厳しい挑戦と大統領選挙政局を両方同時にうまく進めていくことは容易ではない。野党は黄教安まで弾劾の対象にするかもしれない。国家が回復不能の患者になって横になってしまったらどうしよう、黄教安がハンドルを握った瞬間に国が止まってしまったらどうしよう。

３つ目の心配は朴槿恵権力の無秩序な消滅だ。これが最も恐ろしい。朴大統領が現在直面している状態は、亡くなった盧武鉉（ノ・ムヒョン）元大統領の晩年よりも悪い。崔在卿（チェ・ジェギョン）民情首席と金賢雄（キム・ヒョンウン）法務部長官の抗命辞任は外部攻撃ではなく内部抵抗だった。朴大統領はダブルパンチを受けて深々と崩れ落ちた。権力は進む時には厳重に、退く時には秩序を備えていなければならない。権力のハードランディングは国を切断することもある。国民が乱暴な混乱と衝突に巻き込まれる可能性もある。秩序のない権力の消滅は災難だ。家族がいない権力者が権力の座から降りる過程で極端な心理変化や突発行動が起きたらどうするか。注意深く目を凝らしているべきだ。

十分ありえることだからといって必ずすべてのことが起こるわけではない。人間の計画的行動によって予防することができる。事前に最善を尽くして努力を注げば、悪いことをあらかじめ取り除くことができる。他の方法もある。万一のことが起きても悲観に暮れなけば良い。「そうだと思っていた。これを待っていた」と言わんばかりに歯を食いしばって最後まで踏ん張り、状況を少しずつ改善していくのだ。こういう時、人間の決然とした意志が光を放つ。計画的行動にしても決然とした意志にしても、私たちが胸に刻んでおくべきことがある。朴槿恵の失敗を韓国の失敗にしてはいけないということ。朴槿恵の失敗と韓国の失敗の間に防火壁を設置しなければならないということ。困難を乗り越えて築いてきた大韓民国なのに、ここで止まってはいけないということ。

チョン・ヨンギ論説委員