設置されて40年以上、ひんむいた目にこの国の心臓部である世宗路の交差点の真ん中を守っている忠武(チュンム)公・李舜臣(イ・スンシン)将軍の銅像には古くから論難の種がひとつある。忠武公は目の高さまで掲げた長剣をしっかり握りしめている。閑散島の月が明るい夜、水楼にひとり座り、深く憂いなげいているときにも身体から離しておかなかった将軍の分身ともいえる大きな刀だ。ところでよりによって鞘を握った手が右手だ。何かのとき、左手で刀を抜いて振り回さなければならないという話なのだが、忠武公が左利きだったという記録はそのどこにもないというのが論難の始まりだ。刀を右に差すのは意思がないという意味、すなわち降参を意味する姿勢だと言いがかりをつける人も少なくない。