Ｐ＆Ｇ、シティ銀行、ペプシコーラ、ヤフードットコム、サムスン電子。ピザハットの李承一（イ・スンイル）代表（５３）がこれまで渡ってきた会社だ。業種を網羅し、停滞中の企業の競争力を回復させる仕事をしてきた。

最近、ソウル貫鉄洞のピザハットキッチンで行ったインタビューで、李代表は「停滞より失敗がよい」と主張した。李代表が就任した２００８年、ピザハットは７年連続の売上減少で苦戦していた。ところが「ピザハットを立て直せ」という特命を受けると、“大事故”を起こした。ピザハットを「パスタホット」に変え、売り上げが急減したのだ。李代表は「韓国の消費者を理解できず“衝撃マーケティング”を選択したのが敗因だった」と語った。

金曜日午後５時からテレビ広告を出したが、すぐに注文の電話が急減した。顧客が「ピザハットはなくなった」と受け止めたのだ。このため広告を中断し、ピザハットに再び変更したが、売り上げの回復に９カ月かかった。

それ以降、テレビ広告の前に消費者調査を３段階に分けて徹底的に行った。広告制作前の段階でストーリーボードを見せて理解度と購買意向を尋ね、広告制作後にまた消費者の購買意向と反応を確認するシステムを定着させた。

李代表はその後も革新を続けた。「ピザハットは高い」という言葉のため、２万５０００ウォン（約２５００円）だったピザの価格を１万６０００ウォンまで低めた。２０１０年に発売した５９００ウォンの１人ピザは顧客の反応がよく、昨年は前年比で販売量が１９０％上昇した。

ピザハットのピザはまずいという不満も原点から研究を始めた。李代表は「本社が今回だけは引き止めた。安くておいしいピザを作るのは不可能だという理由だった」と振り返った。しかし「冷めてもおいしく、誰が作っても最高の味」というピザを作ろうと努力した。生地を開発するのに９カ月かかった。こうして誕生したのが粘り気のある生地だ。

今回も反応が良かった。２００８年に世界ピザハットの社長の前で失敗事例を発表した李代表は、２年後には同じ場所で生地の成功事例を発表することになった。業界は李代表を“ミスターターンアラウンド”と呼び始め、李代表は今年からタイのピザハット社長まで兼任することになった。“コリアン生地”は世界のピザハットで使われる代表的な生地として定着した。

ピザハットは最近、ソウル鍾路区貫鉄洞に「ピザハットキッチン」をオープンした。顧客がカウンターで注文してピザを受け取るのではなく、価格が安く、料理の過程を公開するオープンキッチン形態だ。

李代表は「従来のオーブンの代わりにデッキオーブンを使って料理時間を減らし、ピザの味は高めた」とし「ピザハットキッチンは飽和した外食業界で突破口を見いだす実験」と話した。