政府の対北朝鮮部処も信頼できない。４年前から収監生活中の宣教師キム・ジョンウク氏をはじめ、６人の大韓民国国民拘束事態にもかかわらず、これという対策がない。９億３０６０万ドル（約１０５０億円）の対北朝鮮食料借款が踏み倒される状況だが、償還要求をためらう。北朝鮮が請求書を受領しないという不平だけで終わった。核・ミサイル挑発で世論は怒っているが、８００万ドル規模の対北朝鮮支援を決定して批判を招いた。

韓国の国家元首に対する誹謗、国民への脅迫が深刻だが、対応は安易だ。国連総会に出席した李容浩（イ・ヨンホ）北朝鮮外相は２５日（現地時間）、ニューヨークで「米戦略爆撃機が領空を侵犯しなくても自衛権を行使する」と主張した。トランプ大統領の北朝鮮「完全破壊」発言が宣戦布告であるためこのような権利があるという。李容浩の言葉通りなら、北朝鮮はその間、無数の対南宣戦布告をしたことになる。対南特殊部隊の青瓦台・延坪島（ヨンピョンド）打撃訓練場を訪れた金正恩が自ら「南朝鮮のものを掃き捨てろ。ソウルを乗っ取れ」などの極端な発言をしてきたからだ。

文在寅政権の青瓦台官僚と政府部処構成員の主流は民主化運動と進歩社会活動の経験を持つ。民主と人権・自由・平和を最高の価値と見なすと知られている。対北朝鮮問題でも制裁より対話を重視し、人道支援や経済協力・交流に開かれた心を見せた。しかし彼らが執権勢力として直面した「北朝鮮」という現実は容易でない。誰よりも人権弁護士出身の文在寅大統領が金正恩政権の実体的真実を目撃し、かなり煩悩しているはずだ。

しかし北朝鮮の挑発本性が表れると、選択肢は明白になった。朴正熙（パク・ジョンヒ）大統領の１８年長期執権と全斗煥（チョン・ドゥファン）時代を経て朴槿恵（パク・クネ）大統領の国政壟断まで倒した韓国社会の民主化勢力が、北朝鮮の７０年労働党独裁統治が永続できると信じるなら、それは迷妄だ。若い頃、権威主義体制に抑圧された空虚な心をげん惑させた主体思想派類の老廃物さえ取り払えば難しいことでもない。今からでも民族の運命を壟断する金正恩の軍事冒険主義路線に断固たる批判の声を出すことを望む。北朝鮮同胞の人権回復と民主化のために急いで額を突き合わせることを勧める。ひょっとしてという期待であいまいにするには任期５年はあまりにも短い。

イ・ヨンジョン／統一北朝鮮専門記者／統一文化研究所長


北朝鮮の前に立てば委縮して歪む群像（１）