ファン・イクファン元城南市庁コーチ（４９）はビクトール・アン（２９、韓国名アン・ヒョンス）の恩師だ。ロシアでも１年６カ月間指導し、弟子の復活を近くで見守った。現在は高麗大室内アイスリンク所属の講師として働くファンさんに先週末に会った。

市の財政悪化のため、２０１０年末に城南市庁はショートトラックチームを廃部した。ファンさんは「ショートトラック皇帝が一日にして青年失業者となった。国内大会に無所属の『競技一般』で参加した」とし「ひざの手術を４回も受けたヒョンスを受け入れる国内のチームは一つもなかった。結局、２０１１年１２月にヒョンスがロシアスケート連盟の帰化の話を受諾した」と説明した。

ビクトール・アンは帰化後もしばらく適応に苦しんだ。２０１２年１月にビクトール・アンの要請を受けてファンさんがロシアに向かった。当時、ロシア代表チームを韓国人コーチが担当していたが、韓国チームのようにスパルタ式の練習をさせ、ビクトール・アンが困惑していた。

ファンさんは「五輪３冠王のヒョンスが助教と示範の役割をしていた。ひざがよくなく、他の選手が１３周するとき２周も遅れたりした。体の状態が小学生レベルだった。一緒によく泣いた」と振り返った。

ロシアスケート連盟はファンさんを迎え入れるなど、従来のコーチングスタッフを刷新した。ビクトール・アンの再起を本格的に支援したのもこの時期からだ。ファンさんは「血液検査の結果に基づいて個別の練習プログラムを組んだ。スケート靴の刃も選手のコンディションによって特殊ゲージを活用し、精密に調整した」と話した。

ファンさんは「ヒョンスは非常に強い人間だ。２０１２年１０月にはカナダ・カルガリーワールドカップ（Ｗ杯）第１戦の１０００メートルで優勝した。ロシア選手は練習で率先垂範するヒョンスからサインを受け、写真撮影を要請するなど敬意を表し始めた」と伝えた。２０１１年５月にロシアに渡った後、チームへの適応に約１年５カ月かかったのだ。

ファンさんは「城南市庁のチーム解体後、ヒョンスとイ・ハンビン（２６、城南市庁）を個人指導し、『お前たち２人はソチ冬季五輪の決勝で会うことになるだろう』と話したが、１５００メートルで現実になった。私は確信していた」とし「ヒョンスは２００６年トリノ五輪３冠王時代が第１の全盛期、今回のソチ五輪が第２の全盛期だ。体力は落ちたが、老練な試合運びはさらによくなった。スピードも遜色ない。自分の力を１００％回復した」と話した。

続いて「ヒョンスは脆弱種目の１５００メートルで３位を狙った。今回金メダルを取った１０００メートルとともに５００メートルがメーン種目。選手同士もつれて転倒することがなければ、全種目でメダルを取ると確信している」と語った。

さらに「ヒョンスは自分を助けてくれたロシアの同僚のために５０００メートルリレーのメダルを最も望んでいる。アンカーのヒョンスは『もし４位なら２、３位に、２位なら１位になる自信がある』と話していた」と伝えた。実際、ビクトール・アンはリレー準決勝で２位だったチームを１位にした。

ビクトール・アンは自分を捨てた祖国をどう思っているだろうか。ファン・コーチは「自分が生まれ育った韓国に対するヒョンスの愛情に変わりはない。今は第２の祖国となったが、悪い感情は全くない」とし「韓国の同僚に会えば喜んで冗談も言う。プロ野球ロッテの熱血ファンだが、ロシアでも必ず競技の結果をチェックする。大会でなくても韓国によく帰っている」と話した。

ビクトール・アンを２０１８年平昌（ピョンチャン）冬季五輪で見ることができるのだろうか。ファンさんは「ロシア側が指導者とモスクワ大の教授まで約束したと聞いている。ヒョンスに『ロシア同僚のグリゴリエフは３３歳で、子どももいる。老将の闘魂を見せた李奎ヒョク（イ・ギュヒョク、３６、ソウル市庁）もいる。お前も平昌大会でリレーくらいは十分に出ることができる』と話したところ笑みを浮かべていた。個人的にはヒョンスが平昌大会に出る可能性が高いと見る」と話した。


【特集】ソチ冬季オリンピック２０１４