【コラム】牡丹峰はない(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2015.12.18 14:37
牡丹峰(モランボン)は平壌(ピョンヤン)大同江沿いの低い峰だ。最も高い最勝台から錦繍山まで続く山勢があたかも咲いたばかりの牡丹を連想させるとして名前が付けられた。海抜95メートルのここを北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)は自分の時代の統治アイコンに選んだ。高さ2744メートルの韓半島最高峰を引き込んで「白頭(ペクトゥ)血統」神話を操作した父の金正日(キム・ジョンイル)とは大きな差がある。牡丹峰乙密台は夕食を終えた住民が散歩に出かける近隣公園のようなところだ。それだけ「人民と一緒にする指導者」という親近感あるイメージが金正恩第1書記としては必要だった。
牡丹峰楽団はそのような金正恩式政治の中心にある。簡単に一緒に歌えるレパートリーに電子楽器のなじみ深いメロディを添えた。舞台から下りた歌手は観客席まで入っていき、ファンミーティングのように抱いたり、花束を受けたり渡したり、携帯電話で写真を一緒に撮る。金正恩第1書記の言葉通り「歌政治」であり「音楽爆弾」だ。労働新聞は「強盛国家の建設を先導する第一喇叭手」と絶賛する。