トランプ氏はクリントン氏を刺激する心理戦も駆使している。第２回テレビ討論の際、聴衆席にビル・クリントン元大統領からセクハラを受けた女性たちを座らせたり、今回はクリントン氏が国務長官時代だった２０１２年リビア・ベンガジの米国領事館襲撃事件の時に殺害された犠牲者の母親を討論会場に招いたりもした。トランプ氏はオバマ大統領の異母兄弟であるケニア出身のマリク・オバマ氏も現場に呼んだ。マリク・オバマ氏はクリントン氏を批判してトランプ氏への支持を表明してきた。

優位のクリントン氏はトランプ氏とは立場が違う。トランプ氏の攻撃には鋭く反撃しながらも、同時に「トランプは大統領になれない」ではなく「クリントンこそが大統領にふさわしい」と有権者に刻印させる最後の機会が今回の討論だ。ＷＰは「今回の討論におけるクリントン氏の課題は、トランプ降ろしとは関連がない」とし「強力で前向き、そして説得力のある“クリントン大統領”を見せること」と指摘した。

ウォール・ストリート・ジャーナルも「民主党支持者は大統領選挙がセックススキャンダル誹謗戦に変質してからはクリントン氏がこの国のための前向きなビジョンを丁寧に示すよう望んでいる」と伝えた。だが、第３回討論は第１回討論と同じく、聴衆からの質問に応えるタウンホール方式ではなく候補者同士が正面から意見をぶつけ合う対決方式だ。舌戦を避けることはできない。クリントン氏はトランプ支持層を過度に刺激して投票場へ向かわせてはいけないという「裏の宿題」も抱えている。このためクリントン氏がどこまで討論のレベルをコントロールできるかが今回の討論の観点となりそうだ。


トランプ氏「マスコミが選挙を操作」　オバマ氏「泣き言を言うな」（１）