時間をお金のように考える米シリコンバレーの最高経営責任者（ＣＥＯ）の中国訪問が増えている。昨年１０月３０日に北京で開かれた清華大学経済管理学院顧問委員会にはアップルのティム・クック、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフトのサティア・ナデラらが出席し、中国の習近平国家主席に会った。１２月３日に浙江省烏鎮で開催された第４回世界インターネット大会にもティム・クックをはじめ、グーグルのサンダー・ピチャイ、シスコのチャック・ロビンスが参加した。シリコンバレーＣＥＯが中国に集まる理由は何か。

中国浙江省烏鎮で世界インターネット大会を開催したのは、中国のサイバーセキュリティー法を執行する国家インターネット情報弁公室だ。そこに出席するために、クックが習近平主席に会ってからわずか１カ月ぶりにまた中国を訪れた理由は何か。

答えは簡単明瞭だ。アップルは中国への研究開発（Ｒ＆Ｄ）投資を拡大して中国の中小企業と協力を強化するという、いわゆる「チャイナ・インサイダー（Ｃｈｉｎａ　Ｉｎｓｉｄｅｒ）」戦略を今後も引き続き追求するということだ。

実際、シリコンバレー企業の「チャイナ・インサイダー」戦略は非常に無謀に見える。中国政府が２０００年代以降、情報主権を名分に海外企業にソースコードを要求したり、また中国で生成されたデータの海外移転を厳しく統制する政策を推進しているからだ。

フェイスブックとグーグルはそれぞれ２００９年と２０１０年から接触を遮断された後、中国でＷｈａｔｓＡｐｐやグーグル翻訳のような一部のサービスだけを提供している。アップルは中国政府の仮想私設網（ＶＰＮ）規制政策のため２０１７年７月にＶＰＮアプリをＡｐｐ　Ｓｔｏｒｅから削除しなければならなかった。このように中国政府がシリコンバレー企業を規制する間、中国ではどんなことがあったのか。ＢＡＴと呼ばれるバイドゥ・アリババ・テンセントなどの中国企業が急速に成長した。現在、アリババとテンセントは時価総額でマイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックに迫っている。中国政府の牽制と中国企業の成長でアップルのシェアは縮小した。それでもアップルはより多くの中国現地パートナーと技術およびサービス部門の協力を追求するという計算だ。北京と深センのほか、上海と蘇州にも研究開発センターを追加し、貴州省にｉＣｌｏｕｄサービス利用者のためのデータセンターを設置することにした。

グーグルもアジア地域最初のＡＩセンターを北京に新設すると発表し、マイクロソフトは昨年５月に中国政府のサイバーセキュリティー懸念を反映した中国政府機関専用ウィンドウズ１０バージョンを出した。

シリコンバレー企業はなぜここまで中国に力を注ぐのか。最も大きな理由は、中国が米国に次いで大きなデジタル経済に発展したからだ。中国はすでに世界電子商取引の４２％を占めている。

第４次産業の寵児の一つ、フィンテック（情報技術と結びついた金融サービス）でも中国は米国を追撃している。世界フィンテック企業の投資で中国の比率は２０１３年の７％から２０１６年には４７％に急成長した。モバイル決済規模だけを見ると、中国が米国の１１倍規模に格差が大きく広がった状態だ。

米中間のデジタル技術格差が急速に縮まっている点も重要な要因だ。２０１３年に４．９倍だった格差は２０１６年には３．７倍に縮小した。北京の中関村や深センの華強北では第４次産業革命の核心である人工知能、ビッグデータ、無人自動車、スマートホームなどの産業で頭角を現すスタートアップ企業が次々と生まれている。世界ユニコーン（企業価値が１０億ドル以上の非上場スタートアップ）の３分の１近くが中国で創業されたという事実は決して偶然でない。

市場規模だけでなく技術の格差までが減り、シリコンバレー企業の「チャイナ・インサイダー」戦略にも変化の兆候が表れている。直接進出してシェアを拡大するよりも、有望な中国スタートアップを発掘して育成したり、大企業との協力を模索しているのだ。


＜チャイナインサイト＞シリコンバレーのＣＥＯはなぜ中国に力を注ぐのか（２）