中国政府の市場との疎通失敗が人民元の乱高下を大きくする(2)
中央SUNDAY/中央日報日本語版2016.02.09 11:27
効果は長引かなかった。さほど経過せずに人民元の価格は再び首をうな垂れることになった。トムソンロイターは「最近ではロンドン外国為替市場でも人民元のダンピングが行われている」と伝えた。投機勢力の猛攻に、戦場が香港とロンドンへと拡大しているわけだ。依然としてお腹をすかせたヘッジファンドは人民元攻撃を止めない勢いだ。むしろ戦列を整えて再集結する姿だ。ブルームバーグは3日「オプション市場で人民元の下落ベッティングがアジア通貨の中で最大を記録した」と報道した。香港オプション市場で3カ月ほどドル対比の人民元の売りオプションプレミアムは2011年5月以降5年ぶりに最高値まで跳ね上がった。
◆中国、昨年の資本流出1兆ドルに
為替投機の歴史を見れば結果は引分けに近い。ソロスは英国ポンドの投機では勝った。98年にタイ政府も屈服させた。だが、その年に香港で敗北の痛みを経験した。ソロスは米国ドルに縛られた香港ドルを攻撃するために香港証券市場で株式を空売りし、香港ドルを市場に持ち出して売った。香港の金融当局は外国為替市場で1180億香港ドルを買い入れ、時価総額の5%に該当する株式を買い取って株価を引き上げながら対抗した。結局ソロスは損失をこうむって退いた。97年マレーシアのマハティール・モハマド首相は、強力な資本統制措置でソロスの攻撃を防いだ。
今度はどうなるだろうか。投機勢力の攻勢を防ぐのに中国の外貨準備高(昨年12月末現在で3兆3304億ドル)が充分でないこともある。国際通貨基金(IMF)が安全な水準で提示した外貨準備高2兆7500億ドルとの格差も大きくない。フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルは最近の報告書で「中国外貨準備高が多いが中国人7500万人が1人あたりの年間持ち出し限度の5万ドルずつを持って行けば、すぐにすっかりなくなってしまう」と指摘した。似たようなことが広がっている。最近、香港経由の中国企業の輸入が急増している。WSJなどは「中国企業らが輸入信用状を膨らませる方式でドルを取り出しつつある」と報道した。昨年、中国から流出した資本規模が1兆ドルに達するというのが一般的な推定だ。
不透明な中国の金融政策決定過程が市場の不確実性をさらに大きくしているという指摘も出ている。英国フィナンシャルタイムズ(FT)は先月28日、ヘンリー・キッシンジャーが「EUと交渉するのに誰と通話すべきか分からない」と嘆いた事例を挙げて「今や市場関係者たちは北京の金融・外国為替政策に対する情報を得るために誰に寄り添えばいいかも分からない状況」と指摘した。そうでなくても成長鈍化に苦しめられている中国経済に今回は金融市場の危機感までが広がっている。市場は当然この問題に対する最高の権威ある声を聞きたい。周小川・人民銀行長が注目を浴びる理由だ。
しかし今、周小川銀行長はいない。ヘッジファンドの人民元攻撃にも反応は出てこない。昨年8月に人民元を2%以上低い評価をした時も、易鋼・副銀行長が出てきただけだ。その後も数回の公式行事があったが、市場に送る周小川銀行長のシグナルはなかった。過去14年間、人民銀行長として仕事をしてきた彼だ。主要20カ国(G20)国家中央銀行総裁の中で最長寿だ。主な国際会議に参加して中国の政策を広報し、人民元の国際化に対するビジョンを説明して「ミスター人民幣」というニックネームを得た。そんな彼が表面に出てこないために市場の不確実性はさらに大きくなっている。経済のリーダーシップの不在が人民元の為替レート問題をさらに大きくしているという話が出てくる理由だ。(中央SUNDAY第465号)
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