【コラム】ピグマリオンとヘル朝鮮

【コラム】ピグマリオンとヘル朝鮮

2016年08月25日08時08分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  感動と歓呼、悔しさ、残念な思いが交錯したリオデジャネイロオリンピック(五輪)が幕を下ろした。24日には大韓民国選手団の本陣も入国した。17日間、地球の反対側で繰り広げられたシナリオのないドラマに、殺人的な熱帯夜もしばらくは忘れることができた。

  夜になると入ってくる勝利のニュースを時々刻々と速報で処理しながら、特に目に引いたものが一つあった。それは朴仁妃(パク・インビ)の神がかり的なロングパットでも、孫興民(ソン・フンミン)の涙でもなく、女子テコンドー67キロ級で金メダルを獲得したオ・ヘリがソーシャルネットワークサービス(SNS)のプロフィールに載せた「ピグマリオン(Pygmalion)」という言葉だった。ピグマリオンはギリシャ神話に出てくるキプロスの王であり彫刻家だ。彼は「ガラテア」という名前の女性像を彫刻したが、その美しさにほれて恋に落ちてしまった。ピグマリオンの気持ちを伝え聞いた女神アフロディテは彼の恋に感動し、女性像に生命を吹き込んだ。その後、彼の名前は「切実に望んで期待すればいつか実現する」という自己充足的な予言・暗示の象徴となった。

  心理学でもこのように前向きな期待や関心が良い影響を及ぼす現象を「ピグマリオン効果」と定義している。これに関連し、ある実証的な研究も少なくない。『応答せよ1988』の挿入曲「一緒に」がヒットしたのは、「いつかは良い日が訪れる」という希望のメッセージに励まされた影響が大きいという分析もある。

  「万年ナンバー2」という悲しみに「国内向け選手」とまで言われたオ・ヘリにとって、ピグマリオンは切実につかもうとした希望の綱だったに違いない。2008年には北京五輪の韓国代表最終選抜戦で脱落し、2012年にはロンドン五輪を控えて負傷し夢をあきらめるしかなかった彼女にとって、3度目の挑戦は怖さそのものだったはずだ。本当にできるのだろうか、自分に機会が与えられるのか確信も持てなかっただろう。しかし彼女はピグマリオンという6文字を握りしめて「きっとうまくいく」と絶えず自己暗示をかけて自らを奮い立たせ、夢を実現させた。

  このようなオ・ヘリのピグマリオンに「ヘル朝鮮」を生きていくこの国の若者はどんな反応を見せるだろうか。「そうだ、もっと頑張って努力すれば良い日が来るはずだ」と、改めて覚悟を固めるだろうか。それとも「現実を分かっていない。ガラスの天井でもなくコンクリートの天井をどのように突き破れというのか。血のにじむような生存競争に直面した私たちのような青年には該当する事項がない」と言って首を横に振るだろうか。

  オ・ヘリの成功は多くない事例かもしれない。小川から龍が出てくるのはもう難しい世の中であるのも事実だ。それでも肯定の力をあえて無視する必要もない。視覚障害者で聴覚障害者だったヘレン・ケラーも「世の中はつらいことが多いが、それに打ち勝つことも満ちあふれている」と告白した。ベストセラー作家のアン・ラモットは「世の中の優れた文章も最初はほとんどすべて最悪だった」と語った。「文章」を「若者」に変えても変わらない。茶はすりつぶされるほど強い香りが出るものだ。リオの汗のしずくがこれを証明している。

  パク・シンホンEYE24次長
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