<成体幹細胞臨床の陰で>幹細胞「奇跡の証人」が「絶望の証人」に

<成体幹細胞臨床の陰で>幹細胞「奇跡の証人」が「絶望の証人」に

2006年01月16日13時49分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
comment
0
share
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixi
写真拡大
  



  2004年11月25日。

  重度のせき髄まひ患者であるファン・ミスンさん(39)が車椅子に乗ってソウルSホテルの記者会見場に登場した。ある生命科学企業と大学病院が用意した席だった。彼女は国内外の取材陣が詰め掛けた中で補助機器に頼って何歩か歩いたようにみられた。

  「20年間、座って過ごしてきたファンさんがへその緒から抜きとった成体幹細胞の注入を受けて少しだが歩けるようになった」という主旨の発表をした。

  「細胞治療の大躍進」「幹細胞で再び歩けるようになった最初の人」。内外信は彼女を「奇跡の証人」と紹介した。

  1年が過ぎた今、ファンさんはどうしているだろうか。取材記者が訪れたとき、彼女は歩くどころかひどい腰痛で車椅子にもまともに座れず、常に寝たきりだった。昨年4月、同じ企業による第2回幹細胞手術を受けてから副作用が生じたのだ。

  「最初の手術後に表れた好転反応はすぐ消えました。以後手術を受けたところこんな体に…」(ファンさん)

  「奇跡が悪夢に変わりました。妻みたいな難病患者たちが幹細胞にあまり期待をもたなければいいと思います」(ファンさんの夫)

  幹細胞効果は医学的に確かに検証されていない。胚性幹細胞は、臨床試験の前段階、成体幹細胞は臨床試験初期段階に来ているだけだ。そのため通常的な臨床試験の場合、安全性検査と臨床計画で提出など複雑な手続きを通さなければならない。

  しかしファンさんはこれを踏まなかった。医学的根拠が弱い手術を、規制をほとんど受けずに行える「応急臨床」という臨床制度があったため可能だった。応急臨床はもともと生命が危ない患者にのみ許容される。しかし黄禹錫(ファン・ウソク)教授がヒト胚性幹細胞論文を発表し「幹細胞=奇跡」という過信が広がっていった2004年7月、食品医薬品庁は「代替治療手段がない場合」もできるようその範囲を広げていた。

  2003年1件もなかった応急臨床承認件数は2004年31件、2005年118件に増えた。胚性幹細胞論文発表の余波で、成体幹細胞応急臨床が急増したのだ。

  取材チームが73件の成体幹細胞応急臨床を追跡した結果、死亡12件を含み▽副作用発生▽好転の症状なし▽手術放棄など治療効果のない場合--が80%以上だった。

  企業、病院側が「効果がある」と主張しても事例の中にはファン・ミスンさんのように効果がすぐ消えた場合が少なくなかった。

  応急臨床は難病患者の願いを聞き入れて幹細胞研究を発展させる機能をする。しかしかなり多くの専門家は「副作用や倫理的問題が起こるかもしれない手術が、何の規制もなしに行われた実態は改善しなければならない」と指摘している。

  ソウル大医学部キム・オクジュ(医療倫理)教授は「今の応急臨床は難病患者の希望を研究者や企業が私益のために利用する側面が強い」とし『黄禹錫神話』から覚めて応急臨床を含む幹細胞全般に対する倫理的、法的枠が作られなければならない」と話す。

  ◇成体幹細胞=骨髄、へその緒の血液などから抜いて培養した幹細胞。受精卵を育てて作る胚性幹細胞と違い、複製、受精卵を破壊する方式ではなく、倫理的問題がほとんどない。医学的検証が不十分で、常用化した手術法もまだない。
【今日の感想】この記事を読んで・・・
興味深い
悲しい
すっきり
腹立つ
役に立つ

今日のイチオシ記事

追加写真