オーストラリアの日刊紙「オーストラリアン」エディターのジャクリーン・マックネイ氏は、「選手がより良い支援を受けるために国籍を変えるのは五輪でよくあること。カナダ出身のモーグル選手のベッグスミスもより良い支援を約束したオーストラリアに国籍を変えた」と話した。仁荷（インハ）大学体育教育科のキム・ビョンジュン教授は、「韓国のショートトラックが優れており国内での受け入れの限界を超えたのだ。卓球は中国選手たちが国籍を取得して韓国と日本代表として活躍する。国としては誇らしいこと」と述べた。

しかし「アン・ヒョンス現象」はありふれたストーリーではない。現在太極マークを付けている選手たちがメダルを取らないことを望む状況に至った。スケート連盟は「バンクーバー五輪代表チーム選抜の時に負傷中のアン・ヒョンスを待つことはできなかった。他の選手に機会を与えなかったとすればそれも差別だ」と釈明したが、ファンの怒りは高まるばかりだった。

ソウル大学心理学科のクァク・クムジュ教授は、「アン・ヒョンスはロシアのユニフォームを着ても韓国選手という認識が強い。また『どれほどのことがあって韓国を捨ててロシアに行ったのだろうか。韓国が能力のある人を抱きとめられなかったせい』という心理も作用した」と説明した。クァク教授はまた、「国が自分にしてくれるものはないという若者たちの憤怒がアン・ヒョンスを通じて一気に吹き出したのだ。『自分だけが被害を受けているようだ』という考えを持っており、アン・ヒョンスの成功を見て代理満足するもの」と話した。

「アン・ヒョンス現象」は彼が意図したものではない。アン・ヒョンスは昨年末にＪＴＢＣとのインタビューで、「二重国籍が許されるものと間違えてロシア国籍を取得した」と話した。韓国国籍を捨てようとしたのではないが、状況はそのように流れたのだ。立場に困るようになったアン・ヒョンスはこれまでインタビューをしてこなかった。

ロシアではビクトル・アンが英雄としてあがめられている。ロシア五輪委員会のイーゴル・　シュベトフ報道官は「ソチ五輪でビクトルがロシアの国歌を歌うのはロシアが夢を実現するものだ。ビクトルはロシアに対する愛国心が強い。国籍だけでなく彼は魂までロシア人だ」と声を高めた。


＜ソチ五輪＞銅メダル獲得のビクトル・アンに熱狂する理由（１）

【特集】ソチ冬季オリンピック２０１４