【コラム】北朝鮮発危機の根本には金正恩版「南朝鮮コンプレックス」(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2017.08.23 14:56
金正恩が公開発言を通じて姿を現したのは執権初年度の2012年4月。祖父の金日成主席(1994年死去)出生100周年公開演説で、金正恩は「わが人民が二度と苦しむことがないようにし、社会主義の富貴と栄華を思う存分享受しよう」という印象深い「約束」をした。当時はまだ民生を重視する路線への転換や前向きな対南・対米政策への期待が内外から出ていた。西欧留学派の金正恩が祖父や父の路線を踏襲しないだろうという点でだ。
しかし金正恩が先代指導者を上回る好戦的な言葉で失望を与えるのに時間はかからなかった。金正恩は翌年3月、西海(ソヘ、黄海)最前方の島の防御隊を視察し「敵陣を刈り取れ」という言葉を吐いた。「降伏文書に印を押す奴もいないほど水葬しろ」というぞっとするような発言もあった。昨年末の韓国大統領弾劾局面でも暴言があった。金正恩は軍部隊を訪問し「南朝鮮のものはき掃き捨てろ」と言った。過去には「南朝鮮執権勢力」または「軍部好戦狂」などと挑発の対象を制限していたが、最近は大韓民国をすべて引っくるめて滅絶の対象としている。平壌近郊に青瓦台(チョンワデ、大統領府)の模型建物を設置して北朝鮮軍対南特殊部隊の打撃訓練をしたことをめぐっては、「対南劣敗感に稚気を帯びた場面を演出したもの」という韓国情報当局の分析が出たりもした。金日成主席時代の1968年に未遂に終わった青瓦台襲撃(1・21事態)の追憶にすぎなかったという話だ。
金正恩の頭を支配している対米認識は一言で「被包囲意識(siege mentality)」に圧縮される。強大な軍事力を持つ「米帝国主義の対北朝鮮孤立圧殺策動」で北朝鮮体制が過去70年間、政治・経済的に孤立と窮乏を免れなかったという主張だ。ここには北朝鮮の中央集権的計画経済や金日成唯一支配の弊害は入り込む隙がない。米国の脅威を誇張することで責任を転嫁しようという意図だ。執権から5年以上も核・ミサイル挑発にオールインし、内部成長動力の大半を費やした金正恩統治の正当性だけが称賛される。「米本土も手のひらに置くことになった」という金正恩の主張が国際社会で共感を得られない理由だ。
金正恩の心理を支配するもう一つの軸は統治リーダーシップに関連する。彼は27歳だった2011年末、金正日総書記の死去で権力の座に就いた。後継者時代に「青年大将」と呼ばれた金正恩の若い年齢は「未熟な指導者」という意味で受け止められた。金日成主席の若い時代を借用したスタイルも試みた。労働党と軍の幹部をジェットコースター式の人事と粛清で掌握してみたが、効果は大きくなかった。ついに2013年末、叔母の夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑した。前では服従するふりをして腹の中で裏切るという「面従腹背」が死刑判決文に登場したのは「若いからといって甘く見るな」という金正恩の警告だった。
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