午前は大学で勉強し夕方にはレストランで仕事を学んだ。週末には各種行事の録音や通訳などのバイトを手当たり次第にやった。１年間の学費１万２０００ユーロを用意するためには休む余裕はなかった。

そうしてまた２年を過ごした。「時間がある時には図書館に走って行き食べ物に関する論文、雑誌などを探して読みました。特に韓国料理に関連した本ならその場で全部読みました」。

文だけで料理を習ってはいない。遅い時間までレストランに残って実習した。「お客が残して行った数百万ウォンのワインを飲んで味を覚えたりしました。その時でなければ絶対できない経験だったからです」。

理論と実力はしっかりと蓄積されていった。学校からは全額奨学金合格の知らせがきた。「アイルランドに来て初めて涙をぼろぼろ流しました」。キム代表は昨年「アイルランド市場での韓国料理の可能性」という論文で大学を首席で卒業した。博士過程に進むべきとの提案がきたりもしたが、彼は事業を選択した。「いまでなければいつやれるのかと考えました。外国人においしい韓国料理を提供しようと料理を始めたりもしました」。

◇「人生は実戦、実際にやってみるだけのことはある」

キム代表は昨年５月、同僚２人とともに韓国料理会社のＪＡＲＵを立ち上げた。「古いが丈夫な布袋の中に料理を愛する人たちの夢を入れる」という意味だ。広く知られたビビンバ、プルコギではなく、韓国の人たちが日常的に好んで食べるテンジャンやカルビなどに集中した

昨年９月にダブリン中心街にあるフードマーケットで料理を初めて販売したが、３カ月が過ぎるとうわさが広まった。雨が降る日にも数十人が列を作って料理を待った。消費者の評価が良くなるとスーパーバリューで運営する「小規模食品生産者支援プログラム」にも合格できた。「アイルランドに韓国人は１０００人ほどしかいないのに韓国料理事業ができるかという懐疑的な言葉も聞いたが、実際に取り組んでみたら違ったのです」。「アイリッシュキムチ」は始まりにすぎない。彼の目標は「アイルランドを超え欧州全体に韓国料理を知らせること」だ。


アイルランド人にキムチを売る、３０歳キム・ゴンム７年の挑戦記（１）