ミストリー氏が開発したシックスセンス技術は映画『マイノリティ・リポート』に登場したバーチャルリアリティ技術に酷似している。例えば、両手の親指、人差し指で長方形模様を作れば自動で写真を撮影することができる。手の平で壁を軽くタッチするジェスチャーをすれば撮影した写真が画面に現れる。指で写真をつかむと写真編集が可能になり、横にスライドさせると電子メールで送ることができる。白い紙を持てば紙の上にそのままタブレットＰＣになるのはもちろん、仮想キーボードも紙の上に魔術のように現れる。さらに仮想キーボードでの入力も可能だ。

ＴＥＤカンファレンスに参加した１２００人の傍聴客全員がスタンディングオベーションするほどだった。サムスン電子関係者は「実生活とバーチャルリアリティを自由自在につなぐミストリー氏をスカウトするために、サムスンだけでなくＭＳ・アップル・グーグルなどグローバルＩＴ企業が“三顧の礼”もいとわなかった」と説明した。ＴＥＤ発表３年後の２０１２年、ミストリー氏はサムスン電子シリコンバレー研究所に招へいされ、それ以降サムスンのウェラブル機器ギアシリーズの開発に参加した。

事実、ミストリー氏が３３歳にして常務に破格昇進したのはシリコンバレーで起きている「インド人材ブーム」も一役買った。特にミストリー氏がデザイン修士学位を受けたインド国立工科大学（ＩＩＴ）の学生は年俸１５万ドルを掲げたサムスン電子のスカウト提案も拒むほどだ。

サムスン高位関係者は「ＩＩＴを卒業するには１８０の単位を履修しなければならず、全体の９０％以上が専攻科目」とし「半面、平均１３０～１４０の単位を履修する韓国の大学生は単位を確実に取るために半分以上を専攻ではない教養科目を申請する傾向がある」と説明した。代表的なＩＩＴ出身者としては国際通貨基金（ＩＭＦ）エコノミストを歴任したインド中央銀行総裁のラグラム・ラジャン氏をはじめ、グーグルのスンダル・ピチャイ主席副社長、サン・マイクロシステムズ共同設立者のビノッド・コースラ氏などがいる。


ＳＦ映画を現実化した３３歳のインドの天才、サムスン常務に（１）