【時視各角】文在寅政権の健忘症

【時視各角】文在寅政権の健忘症

2018年10月30日10時42分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  「疎通と合意の重視」。昨年11月、韓国政府は「文在寅(ムン・ジェイン)の韓半島(朝鮮半島)政策」という名前で大層な北朝鮮政策の青写真を示した。この時に出てきた5大原則の一つがまさにこれだった。統一部は当時、「国会などさまざまな主導者の参加と疎通を制度化し、統一問題・北朝鮮政策に対する国民的共感と合意を引き出す」と約束した。

  それだけではなかった。昨年5月、文政府の政策下絵を描いた国政企画委もこのように力説した。「(今や)統一問題において、国民がともに進むことができる国民大協約を作るときが来た」と。

  ところが見てみよ。そう言っていた政府が、最近はどうだ。今月23日、文在寅大統領は平壌(ピョンヤン)宣言と軍事合意書を批准した。「国会の同意がなければ違憲」という野党の反対などどこ吹く風だ。これが「疎通して国民的合意を成す」と約束した政府の姿なのか。1年も経たないうちに国民との約束を忘れてしまったようだ。

  これまで数多くの人々が北朝鮮政策に関する合意を強調してきた。2013年には与野党、保守・進歩を超えて名望家66人が「平和と統一のための国民統合宣言文」を発表した。政派を超えた共感があってこそ韓国内の葛藤を予防し、政権が変わっても一貫した政策を推し進めることができるという信頼だった。

  実際、保守・進歩を巻き込む合意を抜きにしてドイツ統一も不可能だった。西ドイツであろうとも、理念に従う政派がなかったはずがない。保守的なキリスト民主党は東ドイツの滅亡だけを待っていた。社民党は統一のために最優先で東ドイツを支援するべきだと主張した。そうした2つの政党は世論に押されて度量の大きな譲歩をする。キリスト民主党は東ドイツと修交した国は相手にしないという「ハルシュタイン原則」を、社民党は「統一至上主義」と「中立化路線」を捨てた。互いに一歩ずつ歩み寄ったことで共感を成し遂げたのだ。ドイツ統一を達成したヘルムート・コールは進歩的な東方政策に反対していたが、1982年首相当選後にこれを引き継いだのもこのような合意のためだった。

  このように疎通と譲歩は平和統一をはじめ、すべての政策の基本だ。韓国の歴史でも疎通は完全に異なる結果を生んだりもした。李明博(イ・ミョンバク)前大統領が端的な例だ。彼はソウル市長時代に成し遂げた清渓川(チョンゲチョン)復元事業に対しては概ね良い評判を受けている。これには疎通が大きな役割を果たした。市は清渓川沿いの商人に4200余回も会って意見を聞き、反対派は説得したという。

  だが、彼が大統領就任後に行った4大河川事業は途方もない非難に苦しめられなければならなかった。環境団体など反対論者を無視したのが決定的な禍根だった。このように他の声を傾聴した彼が急変したのはなぜか。清渓川の成功に酔って「お前らに何が分かるか」という傲慢に陥ったためだと私は信じている。

  今のように文政府が耳をふさいだまま独走すれば結果は明らかだ。制裁解除、北朝鮮人権など鋭敏な事案が大きくなるたびに、国論は散り散りに割かれるだろう。

  さらに致命的なことは、北朝鮮政策の将来が不確実になり、平和プロセスそのものを邪魔するだろうという事実だ。現政権は3年半残った任期内に決断しようとするだろう。だが、金正恩(キム・ジョンウン)政権の立場から見てみよう。次に誰が権力を握るのか、また、今の統一政策が続くかどうかも分からないまま、現政権とすべてのことに決着をつけようとするだろうか。

  結局、政府が独走するほど、3年半後の政策変化の振幅は大きくなるほかはない。この点に考えが及べば、北朝鮮が停滞するのは間違いない。政府の足の甲に落ちた火は、南北交流に速度を出すことではない。一日も早く他の意見も傾聴し、北朝鮮政策に関する国民的合意を引き出すことが最優先だ。総じて正・反・合の論理により弁証法的に発展するのが万物の道理というものだ。

  ナム・ジョンホ/論説委員
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