ある日本企業の労組の闘争スローガンが「賃金据え置き」だという話を聞いた。「労組が賃金据え置きを主張するとは」と思うかもしれないが、すべてのものの価格が落ちる状況で賃金だけは下げないで欲しいという要求だ。デフレの威力を感じることができる。
デフレは物価が全般的に下落する現象だ。一部では「物価が下がればよいのでは」という指摘がある。もちろん自分の月給が上がりながら物価が下がればよいだろう。しかし物価が下がれば企業の売上高が減り、結局は月給も削減される。経済主導者は名目金額に非常に敏感だ。入ってくる給料の金額が据え置きまたは減少すれば、危機感が生じる。お金を使おうという思いが弱まり、財布の紐を締める。金額が減れば、月給が減るペースよりも速く消費が減る。経済主導者が実質価値だけでなく名目数字に相当な影響を受ける現象を「貨幣幻想」という。デフレはまさにこの貨幣幻想と結びつきながら経済主導者の心理を冷え込ませる。