＃資金難、職員の背信、読書で乗り切る

生きることへの強烈な意志がよみがえった。

一つ目、病気に勝つ。 ニつ目、事業を守る。

言葉ほどやさしいことではなかった。 私はその後の３年半、入院と退院を繰り返した。 日常的に最高経営責任者（ＣＥＯ）の役割をできず、新しい社長を迎えた。 日本警備保障（現セコム）副社長だった大森康彦氏だった。 私は会長に退いた。 とはいえ会社の仕事から手を引くつもりはなかった。 病室にパソコンとファックス、電話機を設置した。 医師に叱られながら遠隔経営を始めた。 新しい事業も熱心に構想した。

危機が続いた。 ８４年に子会社を通して始めた商品価格データベース化事業が失敗した。 打撃が大きかった。 銀行の融資で足元の火を消す日々だった。 ８６年にはいわゆる「ソフトバンク事件」が発生した。 信頼してきた有能な役職員２０人が一斉に辞表を出した。 独立して会社を設立すると言った。 背信だった。 私は屈辱感を抑えて最後まで頼んだ。 しかし引き止めることはできなかった。 彼らが作った会社は結局、長く持たずに消えた。 ドラマでよく見るように裏切った人は絶対に成功しない。 彼らのほかにも数人がライバル会社に移った。 顧客の不満も大きかった。 「あの人は最近、見えませんね。 義理を欠いた人だ」という反応だった。