１４日、シンガポール室内スタジアム公演会場に現れた金正哲（キム・ジョンチョル、３０）は一般の人たちと変わらない姿だった。ポップ歌手エリック・クラプトンの曲に熱狂する金正哲が北朝鮮の金正日（キム・ジョンイル）国防委員長（６９）の二男とは信じがたいほどだった。ピアスまでした金正哲を警護する北朝鮮の青年らは「ＥＲＩＣ　ＣＬＡＰＴＯＮ」と書かれたＴシャツを着ていたし、若い女性はスキニージーンズ姿で舞台に投げるバラの花を持っていた。

入場する時、韓国放送局のカメラを見て硬い表情になったが、公演が始まるとその表情は変わった。スマートフォンやインターネットに慣れた西側国家のＭ（モバイル）世代の青年と変わらない姿だった。

実弟の後継者である金正恩（キム・ジョンウン、２７）とともにスイスに留学した金正哲は以前からクラプトンの大ファンだ。留学生活をしながらクラプトンにはまったという。１１日に始まったクラプトンの世界巡回公演のうち、平壌（ピョンヤン）から比較的近くて早い日程のシンガポール公演を選んだということだ。

金正哲はシンガポールに一週間以上滞在し、１５日に帰途に就いたと、現地消息筋は伝えた。また駐シンガポール北朝鮮大使館の関係者の警護と案内を受け、１４日に公演を観覧するまでは、ショッピングモールと東洋最大の海洋水族館や遊園地があるセントーサ島をはじめとする主要観光地を回ったことが確認された。金正哲は特にショッピングモールで多くの時間を過ごし、父・金正日国防委員長の誕生日プレゼントやダイヤモンドなどを数多く購入したという。

金正哲が父の誕生日（２月１６日）を控えて外遊したという点で、さまざまな声が出ている。対北朝鮮情報関係者は「金正哲が１５日に平壌に戻ったとすれば、特に問題はなさそうだ」と述べた。

しかし不適切な行動で父の誕生日の雰囲気を乱しただけに、後続の措置があるという見方もある。金委員長は金日成（キム・イルソン）３回忌が終わった後、総秘書職を譲り受けるなど孝心を見せた。金委員長は０６年６月、クラプトンのドイツ公演に行った金正哲が日本のテレビに露出したのを見て激怒したという。金正日の料理人を務めた藤本健二氏は著書で「正哲王子について金正日はいつも‘女の子みたいだ’と話していた」と伝えた。

世宗（セジョン）研究所の鄭成長（チョン・ソンジャン）首席研究委員は「海外旅行制限のような謹慎処分が下されるだろう」とし「兄の立場が狭まれば、後継者の弟・金正恩には有利に作用する可能性もある」と話した。

金委員長が金正哲を強く叱責するのは難しいという声もある。世界北朝鮮研究センターのアン・チャンイル所長は「弟の正恩に後継者の地位を譲ったという点で、金正日は正哲に同情心があるはず」と語った。

後継者の金正恩と同じ母（高英姫）から生まれた兄弟という点も考慮される。金正恩が国家安全保衛部に異腹の兄・金正男（キム・ジョンナム、４０）の平壌別荘ウアム閣を捜索させたのとは違うということだ。金正男は最近、海外メディアとのインタビューで、３代世襲に反対するような発言をした。

北朝鮮の高位層と住民に及ぼす影響も関心事だ。金正哲が北朝鮮では派手に見える身だしなみの女性と一緒にポップ公演会場を訪れる姿を核心幹部が否定的に受け止める可能性がある。


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