政府が済州（チェジュ）海軍基地の建設を妨害していた不法デモの参加者に免罪符を与えた。政府は昨日、閣僚会議を開いて済州海軍基地の建設を遅延させて損害を与えた市民団体などに提起した求償権訴訟を撤回することを決定した。政府は立場資料で「訴訟が遅れれば、その勝敗を問わず分裂と反目はより一層深刻化して対立による社会的費用はさらに増加するだろう」としながら撤回の背景を説明した。しかし、この決定で法を最後まで執行しなければならない政府が不法デモを事実上認めた格好になった。また、政府が求償権をあきらめるにつれ、数十億ウォンの国庫損失が避けられなくなった。

済州の民軍複合港である海軍基地は江汀（カンジョン）村対策委所属の住民と市民団体などの不法デモで建設が１４カ月も遅れた。このため、海軍は建設業者に２７５億ウォン（約２８億５６００万円）を支払い、昨年３月に不法デモをした個人１１６人と５市民団体に対して３４億５０００万ウォンの求償権請求訴訟を起した。しかし、先月３０日、裁判所は「相互一切の民事・刑事上の請求を提起しない」という強制調整の決定を下した。政府がこれを受け入れたわけだ。だが、政府の決定が正しい行為なのかを確かめてみる必要がある。

済州海軍基地は海洋主権を守るために盧武鉉（ノ・ムヒョン）政府の時に建設を決定した事業だ。離於島（イオド）を含む済州道南方の海洋資源を守り、海上輸送路を保護するのが任務だ。有事の際は東海（トンへ、日本名・日本海）・西海（ソヘ、黄海）を行き来する北朝鮮海軍を遮断する任務も果たしている。現在第７機動戦団が配置されている。通常、クルーズ船が停泊できるため、済州道の観光も支援している。しかし、江汀村の一部住民たちと外部から入った常習的なデモ屋はこのような海軍基地を「海賊基地」と呼んで名誉を傷つけた。また、海軍将校に暴行を振るって施設も破損した。さらに、工事を妨害するために道路を占拠するなど、数多くの不法行為を犯した。最高裁判所が不法デモに対して有罪判決を下したのもこのためだ。このような不法デモはただ済州海軍基地だけでない。密陽（ミリャン）送電塔、平沢（ピョンテク）米軍基地建設など重要な政府事業のたびに強行された。

それにもかかわらず、大韓民国の国民なのか疑わしいほど国家観がなく不法デモを繰り返す彼らに政府が免罪符を与えたわけだ。政府関係者は「共生と和合のための大乗的意味」という名分を前面に出したが、今回の決定は政府自ら法を無力化させたことだ。これでは法治国家と言えるだろうか。このような悪い先例によって今後済州海軍基地のような国家事業を妨害する不法デモに対して責任を問うことが難しくなるだろう。また、免除した求償金は国民の血税だ。数十億ウォンにもなる血税には誰が責任を負うだろうか。文在寅大統領が大統領選の公約で「海軍の求償権を撤回して司法処理の対象者は赦免する」と前面に出したが、結局大統領選の公約を言い訳に重要な国家事業に害を及ぼす結果を招いた。今でも政府は済州海軍基地の求償権放棄決定を撤回し、不法デモを防ぐことができるように法を厳正に執行してほしい。