八角形のマッチが家庭の必需品だった時代。「UNマッチ」(マッチの商標)は1969年5月、スペインの画家ゴヤの『裸のマハ』をマッチ箱に印刷した。 70年に最高裁判所は「名画を冒とくし、『淫画化』させたならば、それはわいせつな物」とし、有罪の判決を下した。 これが、韓国初めてのわいせつ罪の訴訟だ。 今なら悔しいくらいに物差しが厳しかったが、とにかく当時25ウォン(約3円)だったマッチは飛ぶように売れた。
同じ年。 わいせつの疑いで初めて起訴された小説『叛奴』(バンノ、主人を裏切った下僕、との意)は、7年にわたる攻防のすえ、無罪の判決を受けた。「表現はわいせつだが、趣旨は健全だった」というのが判決の理由だった。 初出版の当時は1500部だけを刷ったが、まもなくして数万冊以上が売れたベストセラーになった。