韓日中訪問で「小切手外交」のトランプ大統領、米国ソフトパワー失墜の信号?

韓日中訪問で「小切手外交」のトランプ大統領、米国ソフトパワー失墜の信号?

2017年11月14日16時36分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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11日、ベトナム・ダナンAPEC会議に集まった21カ国の首脳。アジア太平洋地域の経済協力を増進するこの会議でトランプ米大統領は保護貿易を力説した。
  14日に終了するトランプ米大統領のアジア歴訪は、国際外交史で米国の地位の変化を象徴する一つの事例になるかもしれない。米国は自国の欠点にもかかわらず、国際社会で民主主義や人権など人類普遍の価値と共同の繁栄を主張してきたし、これを通じて国際秩序のリーダーとして定着してきた。しかしトランプ大統領は「アメリカファースト」を基盤に「小切手」を受けることに没頭する姿で、過去の米国指導者が築いてきた「ソフトパワー」を傷つけ、単独で保護貿易を主張した。アジア政策の輪郭も提示しなかった。「トランプ大統領の米国」が米国のすべてとは言えないが、トランプ大統領の登場と行動が米中パワーシフトの連結の輪にあるのは間違いないようだ。

  10-12日にベトナム・ダナンで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、トランプ大統領は21カ国の首脳のうち唯一、保護貿易を主張した。就任前に自身が「災難」と表現した環太平洋経済連携協定(TPP)については「地域を包括する貿易協定に署名しない」と述べ、離脱を確認した。オバマ大統領など過去の政権が約10年間にわたり努力してきた貿易の枠組みだ。「トランプ障壁」という言葉も出る中、日本など11カ国は米国を除いてTPP事項に合意した。APECの首脳は自由と開放、包容の多者貿易体制を支持するという内容のAPEC宣言文も採択した。こうした雰囲気で中国の習近平国家主席は「開放された発展だけが正しい選択であることを歴史は教えた」と述べ、開放経済の守護者を自負した。

  これに先立ちトランプ大統領が韓日中訪問で受けた儀典は華麗なものだった。日本の場合、国内で「過剰儀典」という声が出るほどであり、中国は紫禁城と天安門広場まで準備した。韓国も最善を尽くした。申ガク秀(シン・ガクス)元外交部次官は「中国はもともと手厚い儀典で実利を得る外交伝統が以前からあった」とし「今回は3カ国間の儀典競争になった側面もある」と述べた。

  過大儀典は大統領候補時代から貿易不均衡(年間3000億ドルの赤字)で中国に、「安保ただ乗り」(free riding)論で韓国と日本に圧力を加えたトランプ大統領に対処するための方便だが、一方では米国の力が依然として強いということを見せる傍証でもある。

  にもかかわらず今回の歴訪は国際社会リーダーの役割を放棄する米国と、その隙間に食い込む、すでに巨大になった中国の姿を見せる契機になったというのが、専門家らの分析だ。

  まず1992年のブッシュ大統領以来となる長期アジア歴訪をしたトランプ大統領は新アジア政策を出さなかった。世宗研究所のイ・ソンヒョン常任研究委員は「オバマ大統領のアジア重視政策(Pivot to Asia)以後の自身の政策を出す機会を使わなかった」と述べた。トランプ大統領は13-14日のASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議および東アジア首脳会議(EAS)で北核および南シナ海イシューを扱ったが、存在感は落ちたという評価だ。EASに出席しない考えだったが、参謀の勧めで出席することになったという話もある。ニューヨークタイムズ(NYT)は「外交参謀の地政学的現実主義と政治参謀の経済民族主義に閉じ込められている」とし「米国の対アジア政策に根本的な混乱が生じた」と報じた。

  これに先立ち韓日中訪問でトランプ大統領は前例のない「金銭」外交を見せた。貿易不均衡(中国)、対北朝鮮政策の純化(韓国)、対北朝鮮強硬策および拉致問題(日本)などの懸案にそれぞれの対応を見せ、韓国(約100兆ウォン)と中国(約282兆ウォン)から380兆ウォンの小切手を受けて行った。首脳会談の合意文はあたかもビジネス契約書のようだった。日本も相当な規模の投資協定を結んだが、具体的な数字は出ていない。

  「小切手外交」(checkbook diplomacy)という言葉がある。外交影響力の拡大のために小切手帳(チェックブック)を携帯し、経済支援、投資をして回ることをいう。中国の対ASEAN、アフリカ外交が代表的な例だ。今回は世界経済力(GDP基準)1位の米国がそれぞれ2位・3位・12位の中国・日本・韓国に対して「逆小切手外交」をしたのだ。トランプ大統領は韓米の将兵の前で「(米国の)雇用創出のためにここ来た」とし、米国民を対象にした発言を続けた。国政遂行支持率が38%まで落ちたトランプ大統領の内政用外交だった。『新世界秩序と韓国』の著者であるイ・ベクスン元ミャンマー大使は「米国が外交を国内政治に露骨に利用した珍しい事例」と述べた。

  米国の伝統的な「価値外交」も消えた。トランプ大統領は習近平主席に人権問題を公開的に取り上げなかった。麻薬犯に対する「超法規的処刑」で非難されるフィリピンのドゥテルテ大統領にも同じだった。訪問国で一般人との接触もなかった。オバマ大統領らは現地の大学で演説し、一般人と接触し、米国の価値とイメージを向上させるのに注力した。

  米中が北核、貿易不均衡、南シナ海問題をめぐり衝突することはなかったが、今後、国際秩序の主導権をめぐる両国の競争はさらに強まる見通しだ。イ・ソンヒョン委員は「第19回党大会を通じて韜光養晦(才能を隠して内に力を蓄える)の破棄を宣言した習近平主席は攻撃外交を加速するはず」とし「周辺国を自国側に引き寄せるネットワーキング戦争が激しくなるだろう」と述べた。

  韓米共同報道文に含まれたが青瓦台が否認して論議を呼んだ「インド・太平洋ライン」もその一例だ。申元次官は「今後、中国の一帯一路(陸・海上シルクロード)と日米印豪のインド・太平洋ラインが対決する時代がくるかもしれない」と予想した。また「中国が米国を脅かす段階に達するにはまだ数十年かかるだろう」とし「その間に韓国は信頼外交に基づいて統一を成し遂げ、周辺国に吸い込まれないよう国力を高めなければいけない」と述べた。
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