【コラム】オタク、ファンダム、そして部族主義=韓国

【コラム】オタク、ファンダム、そして部族主義=韓国

2019年06月12日15時57分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  5年前に日本のアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』のオタクが主人公として登場する長編小説を書いた。最近この小説をテーマに文学評論家と対談をしたが、行事を準備しながら、この5年間にオタクを眺める韓国社会の視線が大きく変わったことを感じた。

  5年前までオタクという言葉を新聞に書く時はかっこの中に「一つの分野に深くはまったマニア」というように完全には一致しない説明を付けなければならなかった。今はもうそうする必要がない。オタク、または韓国語で現地化した「ドクフ」という言葉から、おかしな人、不思議な人というニュアンスもほとんど消えた(その代わりに「ホンモノ」という新しい流行語が生まれた)。

  若者の間で「どのアイドルのドク(オタク、収集)行為をしているのか」と尋ねるのはもはや珍しいことではない。反復観覧、シングアロング(sing-along)観覧、グッズ市場、新商品や限定版販売店の前で数時間も行列をつくるようなオタク文化が一般大衆に広まった。

  5年前の小説で私は韓国でオタク文化が広がる理由を、青年に機会が与えられない硬直した社会構造と結びつけた。日本のオタク文化をそのような形で分析した内容から影響を受けたようだ。韓国の若者の余裕のない現実と自分のための消費がもたらす癒やしも連結した。

  今その小説をもう一度書くとすれば、アイデンティティー危機という側面をもう少し掘り下げるだろう。私たちはみんな他人とは違う人になることを希望する。現代社会はそこにいくつかロマンチックな神話まで加えて主体的な個人になるよう強要する。ところが逆説的にそれは現代社会でさらに難しい。その間で特別な嗜好はそれなりの答えになる。自分がどんなジャンル、どんなミュージシャンのオタクというのが自分を説明してくれるように感じる。

  嗜好は私たちの時代の新しいアイデンティティーになるのだろうか。ややあいまいだ。肌の色、世代、性、性的指向などに比べて嗜好ははるかに流動的で欺まんが入り込みやすい。嗜好は尊重の対象なのか。その言葉が意味することは何か。世の中には良い嗜好も悪い嗜好もないためすべて同じように扱って批判をするなということか。また、テレビのような公論空間でワインに10分を配分すればマッコリにも同じ時間を配分しなければいけないということか。

  同じ5年間に大きくなったと感じるもう一つの文化現象がファンダムだ。オタク文化とファンダム文化はいくらか重なったりもする。特別な嗜好を持つ人たちがその嗜好を媒介に一つになって「特別の自分たち」となる。ファンダムは構成員に学校や故郷、企業に劣らない所属感とアイデンティティーを付与する。ファンダム文化も政治と社会領域に広まった。アイドルファンダムが開発した疎通と行動方式を政治家ファンダムが活用する。このような動きはいくつかの地点で最近の「正体性政治」と重なる。

  ファンダムは私たちの時代の有意味な共同体になるのだろうか。これもあいまいだ。明るい面を見ようとする人はファンダムが社会運動に参加したり寄付活動をしたりする姿を強調するが、陰湿な部分も同じくらい、もしかするとそれ以上に多いかもしれない。一つの集団として責任を与えられるには構成員の加入と脱退があまりにも自由であるため、外部にはいつも無責任に権力を振るう姿として映る。

  ところがこうした悩みがつまらなく感じられるほど、今の韓国社会でオタクとファンダムという現象は市場論理に強く掌握されているようだ。デジタル音源時代が訪れ、音盤販売という収益モデルが崩壊し、音楽産業は「オタクとファンダム商売」に頼ることになった。同じ現象が公演業界、出版界でも表れ、今では文化産業を越えて消費財市場全体へ、さらには政治領域にも広がるようだ。

  この分野のプレーヤーは熱狂的なオタクとファンダムが最初に噂を広めること強く望み、そのためにファンの気分を害するようなことを絶対に避けようとする。私はここでオタクとファンダムの文化が成熟した形で韓国社会と結合するところがよくふさがっていると感じている。ファンダムを意識した会社が所属アーティストに恋愛禁止条項に署名させる状況が正常なのか。そのような社会が良い社会なのか。

  行き過ぎた想像かもしれないが、時々、韓国社会が左右に裂けるだけでなく、いくつかの部族に分かれるのではという考えになる。政治家ファンダム現象は韓国社会を発展させているのだろうか。未熟な「部族文化」の中で健康な懐疑主義は消え、単純主義と極端主義が勢力を強めるのではないだろうか。このようにして世界が破片化するのだろうか。

  いくつかの部族がそれぞれのトーテムを強要する世の中がくれば、どのように暮らせばよいのだろうか。すべての部族の歴史と禁忌を学んで尊重するのか。まさかだ。

  チャン・カンミョン/小説家
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